SSDの低価格化や大容量化、高速化が一段と進むのか――。TLCで232層のNAND型フラッシュメモリを出荷するMicron Technologyの動きを起点にして考える。
SSDの技術と業界は目まぐるしく変化している。Micron Technologyが出荷を開始するのは、メモリセルを232層に積層したNAND型フラッシュメモリだ。コンシューマー市場でもデータセンターでも、SSDの価格や、データ転送などの性能は常に関心事となっている。これにどのような影響を与えるのか。専門家の見方を基に解説しよう。
Micron Technologyが出荷を開始するのは、1つのメモリセルに3bitを格納する「TLC」(トリプルレベルセル)の記録方式を採用しつつ、メモリセルを232層に積層したNAND型フラッシュメモリだ。このNAND型フラッシュメモリは、より小さな空間に、より多くのデータを格納することにつながる。これはSSDの大容量化と低価格化を実現する可能性がある。
232層のNAND型フラッシュメモリが出たことによる影響は他にもある。Micron Technologyのデータセンターストレージ担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのアルバロ・トレド氏は、その一つが性能だと説明する。232層の製品のデータ転送速度は、NAND型フラッシュメモリのインタフェース規格「ONFI」(Open NAND Flash Interface)で、最大2.4GBpsとなる。176層だった従来品の1.6GBpsから大幅に向上した。
データ転送速度が向上するのは、ダイ(集積回路を実装した基板)を構成するプレーンを6つに増やしたからだという。Micron Technologyによれば、データの独立した読み込み操作が個々のプレーンにおいて可能だ。
調査会社Gartnerのアナリストであるジョセフ・アンスワース氏は「プレーン数が多いほどデータ転送速度が向上しやすい」と説明する。プレーン数はSSDを搭載するストレージのベンダーが、性能を見極める際に確認している指標だ。
232層のNAND型フラッシュメモリを搭載したSSDをストレージアレイに使用した場合、その仕様上のデータ転送速度がどのように生きるのかについてはまだ分かっていない。「より速くなるのは間違いないが、まだ結論は出せない」とアンスワース氏は語る。エンドユーザーが目にする製品において232層の特性をどのように生かせるのかを判断するには、時期尚早ということだ。
Micron Technologyは、232層のNAND型フラッシュメモリを、まずは「Crucial」のブランドで提供するコンシューマー向けSSDに使用する。「スモールスタートでこのビジネスを育てる」とトレド氏は語る。同社の生産ラインが、176層用から232層用に切り替わるのに合わせて、2022年内には232層の量産が開始する。
アンスワース氏は「データセンターでは依然としてSSDの価格が重要な関心事だ」と話す。コスト削減が常に重要事項であるメモリ業界において、低価格化の可能性を秘める232層の製品が及ぼす影響は小さくない。他のSSDベンダーがどのように反応するのかが一つの注目点だという。一方では2022年中にSSDが供給過剰になる見通しもあり、「市場の先行きが興味深い」と同氏は述べる。
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