メモリに革新をもたらすことを目指していたIntelが、不揮発性メモリ「Optane」の事業を終わりにすることを明らかにした。この衝撃の発表の背景にある、半導体分野の変化とは。
成功する企業は“引き際”をよく知っている。Intelは2022年7月、次世代メモリとして期待をかけていた製品群「Intel Optane」(以下、Optane)の事業を終了させることを明かした。同社によるこの驚きの決断から、半導体業界が直面する新しい局面が見えた。
Optaneは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)よりも製造コストが安価になり、NAND型フラッシュメモリよりもデータの読み書き速度が高速になるメモリ技術を採用した製品だ。Intelがこのメモリ事業からの撤退を決めた理由を知るには、半導体業界の歴史を、少し振り返る必要がある。
AMD(Advanced Micro Devices)などのプロセッサベンダーとIntelは競合している。先端技術を先行して事業化することによって、他ベンダーとの差別化を図る――これがIntelの重視してきた戦略だ。その戦略をまとめると、以下の3ステップになる。
Intelのこの戦略は、以前は成功していた。同社がOptaneに投資したのも、プロセッサの技術面で他ベンダーを引き離したかったことが理由だ。ところが半導体製造の経済構造が徐々に変化し、過去の成功モデルはIntelから離れていった。
経済構造の変化とは、次の通りだ。最先端の技術を備えつつ、コスト競争力に優れる半導体工場が製造しなければならない半導体製品の量は、どんどん増えていった。その量は、Intelのプロセッサに必要な量をはるかに超えていた。この動きと重なるようにして、半導体工場の建設コストが急騰した。
Intelは最先端の技術を備えた工場を新設できず、既存生産施設の一部を利用するしかなくなった。このやり方が、同社事業の採算に合わないことは明白だった。そうしているうちにIntelのプロセッサ製造技術は、AMDなどのプロセッサを製造しているTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)に後れを取ることになった。その後、Intelのパット・ゲルシンガーCEOは、イスラエルの半導体製造企業Tower Semiconductorの買収を決めた。これには、製造技術の遅れを取り戻す狙いがあった。
製造技術の遅れを取り戻す一方で、Intelは先端技術で競合ベンダーとの差別化を図る方法を必要としていた。そこで同社が打って出たのが、Micron Technologiesと共同開発したメモリ技術「3D XPoint」を活用し、Optaneという不揮発性メモリを販売することだった。
第2回以降は、IntelがOptaneの事業を打ち切りにする理由を詳細に紹介する。
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