「DEI」(多様性、公平性、包摂性)の取り組みは、逆に従業員の分断を拡大させかねないという。それでも専門家は「沈黙するよりも意思表明をする方がいい」と説く。その理由は。
「DEI」(ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン:多様性、公平性、包摂性)の向上に向けた取り組みは、かえって従業員同士の分断を深刻化させているとの見方がある。調査会社Gartnerのアナリストであるレーチェル・ローレンス氏は「DEIの取り組みに対する抵抗や反発に対処する最良の方法は、真っ向から立ち向かうことだ」と語る。
反発を避けることが習慣になれば、事実上の現状維持となる。抵抗に屈したと取られる状態が、文化の一部として定着してしまう。「経営幹部がDEIのポリシーや取り組みについて沈黙すると、どの立場の従業員であっても『疎外された』と感じる。自分の声を聞いてもらえないと感じるからだ」とローレンス氏は説明する。
Gartnerによると、米国に影響を与えている政治的および社会的な分断は、ビジネスのあらゆる領域に、同じように影響を与えている。同社のアナリストであるフランク・バイテンダイク氏は、2022年10月開催のカンファレンス「Gartner ReimagineHR Conference」に、「経営陣は社会の変化にどう対処すべきか」というテーマで登壇。同社が2021年6月〜7月に、経営幹部273人を対象に実施した調査の結果を紹介した。それによれば、回答者の57%が「両極化が、米国民が抱える最大のリスク要因だ」と考えている。
従業員が特定の社会問題について、CEOと同じ意見を持っているとは限らない。しかし「沈黙を保つことには代償が伴う」とバイテンダイク氏は警告する。「社会的トピックについて率直に発言すると、従業員の一部や顧客の一部を遠ざけてしまう恐れがある。だが社会的問題について率直に発言しないと、全ての人を遠ざけてしまいかねない」(同氏)
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