多様性のある採用を目指すときに大切なポイントは幾つかある。求人票の書き方のポイントと共に、採用を通して職場のDEIを実現するために本当に大切なことは何かを探る。
第3回「『あるとよい』要件ばかりの“てんこ盛り求人票”はなぜ駄目か」までの3回にわたり、本連載は「DEI」(Diversity、Equity、Inclusion:多様性、公平性、包摂性)を踏まえた求人票の書き方のポイントを解説してきた。連載を通じて紹介するポイントは、以下の4つだ。
第4回となる本稿は、上記3つ目と4つ目のポイントを紹介する。
国際的に採用活動をする企業が多様な人材にアピールするためには、求人票の言葉と表現を、求人を出す地域で伝わるものにしなければならない。
「英国とアイルランドの求職者に響く言葉が、米国やアジア太平洋地域の求職者にも響くとは限らない」と、人材コンサルティング会社AMSでDEIアドバイス担当シニアバイスプレジデントを務めるジュディ・エリス氏は指摘する。エリス氏は、内容が分かりやすいことに加えて、対象地域に合った言葉遣いになっているかどうかを確認すべきだと話す。
飾り立てたマーケティング用語も、英語を第二言語とする志望者を混乱させる可能性があるため避けることが望ましい。例えば「当社は『on the ball』(状況判断に優れ、素早く理解して対処できる、といった意味)な人材を求めている」という言い回しは、英語を母語としない人には意味が伝わりにくく、混乱を招く恐れがある。
「求人票に偏向した言葉が入るのを防ぐ」「志望する可能性のある人を排除するような求人票の作成を防ぐ」といった目標のために、支援ツールを利用するのも一つの方法だ。エリス氏が例に挙げた、インクルーシブな求人票の作成を支援するツールには以下がある(主に英語の文章作成で利用可能)。
こうしたツールの中には人工知能(AI)技術や自動化技術が組み込まれているものもあり、採用担当者や人事部門の責任者が適切な求人要件を設定するのに役立つ。混乱を招く恐れがある言い回しを避けたり、インクルージョンに反する言い回しをなくしたりするのにも活用できる。
採用担当者や求人票の作成者が、これらのツールだけを頼りにしてDEIの取り組みを進めることは避ける必要がある。よりインクルーシブな求人票の作成にツールが役立つのは確かだが、多様性や包摂性の欠けた企業文化をツールが修正してくれるわけではないからだ。
航空宇宙技術と防衛技術を手掛けるNorthrop Grumman Systemsでタレントアクイジション担当バイスプレジデントを務めるピーター・ブルックス氏は、「支援ツールを活用して、差別につながる言葉をうっかり使わないようにすることはできる」と話す。ただし企業の「先入観を積極的に打ち破ろうとする意識」が低い場合、ツールを活用しても本当の問題解決にはつながらないとブルックス氏は強調する。
企業が職場の多様性と包摂性を育むことで受ける恩恵は、人事の枠だけにとどまらない。こうした企業文化を醸成することが業績の向上につながる、とブルックス氏は考えている。「道徳上の責務もあるが、DEIの取り組みは会社のパフォーマンスを最適化するために欠くことができない、非常に実用的な要素だ」(同氏)
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