ロンドンでタクシーの運賃に「ダイナミックプライシング」を導入したUber。タクシーの乗務員が組織する組合はUberとロンドン市に運賃設定の不透明性について訴えた。その実態とは。
ロンドンで、スマートフォンのアプリケーションを使って業務を請け負うタクシー乗務員が組織構成する労働組合が、タクシーの運賃と乗務員の賃金設定に異議を申し立てている。配車サービスを提供するUber Technologies(以下、Uber)が、ロンドンで展開するタクシー事業の運賃に「ダイナミックプライシング」(需要状況に応じて価格を変動させる手法)を導入したからだ。
異議を申し立てているのは、App Drivers and Couriers Union(ADCU)という労働組合だ。ADCUで書記長を務めるジェイムズ・ファーラー氏は、ダイナミックプラシングを制御するためのアルゴリズムを「危険であり、乗客を食い物にしている」と表現する。このアルゴリズムの使用を許可したロンドン市長と英ロンドン交通局(TfL)に対しては「職務怠慢だ」と非難している。
「タクシーの乗客と乗務員は、搾取される不当な立場に立たされている」とファーラー氏は語る。同氏は、深夜に帰宅する乗客や通院する高齢者といった弱い立場の乗客は、サービスの利用を拒否されたり、不当な運賃を提示されたりする危険があるとも指摘する。一方、乗務員の賃金は競合事業者間の値下げ競争や、割り当てられた業務を遂行する回数が少ない乗務員を分類するブラックリストによって不当に安く抑えられるとも同氏は懸念する。
ファーラー氏はロンドン市長に対して、タクシーの乗客と乗務員のためにデータ保護の基準を高く設定すること、ロンドン市の小型タクシー市場でアルゴリズムを使ったダイナミックプライシングの利用を直ちに禁止することを求めている。
ADCUによると、Uberは2022年12月にプライバシーポリシーを改訂したものの、乗務員と乗客のデータがダイナミックプライシングで具体的にどのように処理されるのかはまだ公表していない。
英Computer WeeklyはUberに対し、アルゴリズムを使ったダイナミックプライシングによる乗客と乗務員への影響について問い合わせた。同社は、アルゴリズムが個人情報を使用するという点を否定した。
第4回は、ADCUが起こした訴訟の結果を踏まえて状況を整理する。
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