アプリケーションを使ったタクシーの配車事業を手掛けるUberは、アルゴリズムを使って運賃と乗務員の賃金を設定している。この方針を巡り、乗務員から批判の声が上がっている。
スマートフォンのアプリケーションを使って業務を請け負うタクシーの乗務員にとって、請け負う業務の件数や運賃設定は重要な要素だ。配車サービスを提供するUber Technologies(以下、Uber)は、配車サービスの運賃や乗務員への仕事の割り振りにアルゴリズムを利用している。このアルゴリズムに対し、スマートフォンのアプリケーションを使って業務を請け負うタクシーの乗務員と配送業者が組織する労働組合は、異議を申し立てている。何が問題なのか。
アルゴリズムの使用に懸念の声を挙げるのは、App Drivers and Couriers Union(ADCU)という労働組合だ。ADCUは、Uberのアルゴリズムがタクシーの需要や、乗客と乗務員の行動をリアルタイムに監視していると指摘した上で、2つの問題を提起する。1つ目は乗客に通常よりも高い運賃を提示すること。2つ目は乗務員側の問題で、賃金が低く抑えられることに加え、業務の遂行状況によってはブラックリストに載せられる場合もあるという点だ。
Uberの広報担当者は、アルゴリズムによる個人情報の利用と、割り当てられた業務を遂行する回数が少ない乗務員のブラックリスト化をきっぱりと否定している。Uberは2021年5月、英国の労働組合の一つであるGMB(全国都市一般労働組合)との間でUberの乗務員がGMBに加入することに合意。その際、アルゴリズムを使った「ダイナミックプライシング」(需要と供給に応じて価格を変動させる手法)の導入前に乗務員と協議し、その意見を導入実施時に組み込んだとも同社は説明する。
「Uberは信頼性確保のため、乗客に運賃の見積額を提示しており、これが乗務員にとっては業務を重ねるモチベーションにつながる」と広報担当者は指摘する。同氏によると、リアルタイムに取得する情報を基に配車を実施することで、Uberは乗務員が魅力を感じる賃金条件を提示しているという。
アルゴリズムに個人情報は使用していないと主張するUberに対し、ADCUの書記長ジェイムズ・ファーラー氏の主張はこうだ。「個人情報とは個人の身元を特定できる情報を指し、個人の位置情報やタクシーを使った移動に関する情報も含まれる」
ファーラー氏は乗務員と乗客の個人情報がアルゴリズムに使われていることは明らかだと主張し、「個人情報に合わせてサービスを提供するパーソナライズの手法は、乗務員と乗客にとって脅威だ」と語る。スマートフォンのアプリケーションでサービスを提供するUberをはじめとする企業がアルゴリズムを使い、自社にとって都合の良い運賃や賃金を設定できるからだ。「乗客や乗務員といった利害関係者に対する透明性の確保と、英ロンドン交通局(TfL)による十分な規制と監督によってしか、アルゴリズムの悪用を防ぐことはできない」と同氏は述べる。
第3回は、ADCUが訴えるアルゴリズムの危険性について整理する。
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