Uberドライバーにとって「ダイナミックプライシング」は悪でしかない?Uberの“変動運賃”が招いた騒ぎ【第2回】

アプリケーションを使ったタクシーの配車事業を手掛けるUberは、アルゴリズムを使って運賃と乗務員の賃金を設定している。この方針を巡り、乗務員から批判の声が上がっている。

2023年05月11日 05時15分 公開

 スマートフォンのアプリケーションを使って業務を請け負うタクシーの乗務員にとって、請け負う業務の件数や運賃設定は重要な要素だ。配車サービスを提供するUber Technologies(以下、Uber)は、配車サービスの運賃や乗務員への仕事の割り振りにアルゴリズムを利用している。このアルゴリズムに対し、スマートフォンのアプリケーションを使って業務を請け負うタクシーの乗務員と配送業者が組織する労働組合は、異議を申し立てている。何が問題なのか。

Uber乗務員の懸念 アルゴリズムの使用は労働条件にどう影響する?

 アルゴリズムの使用に懸念の声を挙げるのは、App Drivers and Couriers Union(ADCU)という労働組合だ。ADCUは、Uberのアルゴリズムがタクシーの需要や、乗客と乗務員の行動をリアルタイムに監視していると指摘した上で、2つの問題を提起する。1つ目は乗客に通常よりも高い運賃を提示すること。2つ目は乗務員側の問題で、賃金が低く抑えられることに加え、業務の遂行状況によってはブラックリストに載せられる場合もあるという点だ。

 Uberの広報担当者は、アルゴリズムによる個人情報の利用と、割り当てられた業務を遂行する回数が少ない乗務員のブラックリスト化をきっぱりと否定している。Uberは2021年5月、英国の労働組合の一つであるGMB(全国都市一般労働組合)との間でUberの乗務員がGMBに加入することに合意。その際、アルゴリズムを使った「ダイナミックプライシング」(需要と供給に応じて価格を変動させる手法)の導入前に乗務員と協議し、その意見を導入実施時に組み込んだとも同社は説明する。

 「Uberは信頼性確保のため、乗客に運賃の見積額を提示しており、これが乗務員にとっては業務を重ねるモチベーションにつながる」と広報担当者は指摘する。同氏によると、リアルタイムに取得する情報を基に配車を実施することで、Uberは乗務員が魅力を感じる賃金条件を提示しているという。

 アルゴリズムに個人情報は使用していないと主張するUberに対し、ADCUの書記長ジェイムズ・ファーラー氏の主張はこうだ。「個人情報とは個人の身元を特定できる情報を指し、個人の位置情報やタクシーを使った移動に関する情報も含まれる」

 ファーラー氏は乗務員と乗客の個人情報がアルゴリズムに使われていることは明らかだと主張し、「個人情報に合わせてサービスを提供するパーソナライズの手法は、乗務員と乗客にとって脅威だ」と語る。スマートフォンのアプリケーションでサービスを提供するUberをはじめとする企業がアルゴリズムを使い、自社にとって都合の良い運賃や賃金を設定できるからだ。「乗客や乗務員といった利害関係者に対する透明性の確保と、英ロンドン交通局(TfL)による十分な規制と監督によってしか、アルゴリズムの悪用を防ぐことはできない」と同氏は述べる。


 第3回は、ADCUが訴えるアルゴリズムの危険性について整理する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

事例 アステリア株式会社

ノーコードでアプリ開発とデータ連携を実現、9社の事例に学ぶ現場DXの推進術

工場や倉庫などの現場では、人手不足などにより業務負担の増大が懸念されており、業務のデジタル化と業務プロセスの改善が急務となっている。そこでモバイルアプリの作成からデータ連携までをノーコードで実現できる製品が注目されている。

製品資料 ジオテクノロジーズ株式会社

6つのユースケースから学ぶ、「人流データ」の効果的な活用方法

広告や小売、観光振興、まちづくりなど、さまざまな領域で導入が進む「人流データ」。その活用でどのような施策が可能になり、どのような効果が期待できるのか。人流データ活用の6つのユースケースを紹介する。

製品資料 ジオテクノロジーズ株式会社

基礎から解説:「人流データ」の特徴から活用におけるポイントまで

人の動きを可視化した「人流データ」。屋外広告の効果測定や出店計画、まちづくりや観光振興など幅広い領域で活用されている。その特徴を確認しながら、価値のある分析・活用につなげるためのポイントを解説する。

事例 アルテリックス・ジャパン合同会社

地図情報によるデータ分析作業を効率化、ゼンリングループ企業はどう実現した?

多くの企業でデータ活用が模索されているが、データ処理の煩雑さや属人化が課題となっている企業は少なくない。そこで注目したいのが、データ分析ツールの活用で課題を一掃した「ゼンリンマーケティングソリューションズ」の取り組みだ。

製品資料 サイオステクノロジー株式会社

ITインフラの自動化を実現、いま注目のクラウド型マネージドサービスの実力

複雑化を続けるITシステムの運用管理は、企業にとって大きな負担だ。そこで負担を軽減するものとして注目したいのが、クラウド上でさまざまな機能を利用できるマネージドサービスだ。本資料では、その詳細を解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。