Uberの“変動運賃”が招いた騒ぎ【第2回】
Uberドライバーにとって「ダイナミックプライシング」は悪でしかない?
アプリケーションを使ったタクシーの配車事業を手掛けるUberは、アルゴリズムを使って運賃と乗務員の賃金を設定している。この方針を巡り、乗務員から批判の声が上がっている。
スマートフォンのアプリケーションを使って業務を請け負うタクシーの乗務員にとって、請け負う業務の件数や運賃設定は重要な要素だ。配車サービスを提供するUber Technologies(以下、Uber)は、配車サービスの運賃や乗務員への仕事の割り振りにアルゴリズムを利用している。このアルゴリズムに対し、スマートフォンのアプリケーションを使って業務を請け負うタクシーの乗務員と配送業者が組織する労働組合は、異議を申し立てている。何が問題なのか。
Uber乗務員の懸念 アルゴリズムの使用は労働条件にどう影響する?
併せて読みたいお薦め記事
連載:Uberの“変動運賃”が招いた騒ぎ
個人情報の保護と営利目的での利用
アルゴリズムの使用に懸念の声を挙げるのは、App Drivers and Couriers Union(ADCU)という労働組合だ。ADCUは、Uberのアルゴリズムがタクシーの需要や、乗客と乗務員の行動をリアルタイムに監視していると指摘した上で、2つの問題を提起する。1つ目は乗客に通常よりも高い運賃を提示すること。2つ目は乗務員側の問題で、賃金が低く抑えられることに加え、業務の遂行状況によってはブラックリストに載せられる場合もあるという点だ。
Uberの広報担当者は、アルゴリズムによる個人情報の利用と、割り当てられた業務を遂行する回数が少ない乗務員のブラックリスト化をきっぱりと否定している。Uberは2021年5月、英国の労働組合の一つであるGMB(全国都市一般労働組合)との間でUberの乗務員がGMBに加入することに合意。その際、アルゴリズムを使った「ダイナミックプライシング」(需要と供給に応じて価格を変動させる手法)の導入前に乗務員と協議し、その意見を導入実施時に組み込んだとも同社は説明する。
「Uberは信頼性確保のため、乗客に運賃の見積額を提示しており、これが乗務員にとっては業務を重ねるモチベーションにつながる」と広報担当者は指摘する。同氏によると、リアルタイムに取得する情報を基に配車を実施することで、Uberは乗務員が魅力を感じる賃金条件を提示しているという。
アルゴリズムに個人情報は使用していないと主張するUberに対し、ADCUの書記長ジェイムズ・ファーラー氏の主張はこうだ。「個人情報とは個人の身元を特定できる情報を指し、個人の位置情報やタクシーを使った移動に関する情報も含まれる」
ファーラー氏は乗務員と乗客の個人情報がアルゴリズムに使われていることは明らかだと主張し、「個人情報に合わせてサービスを提供するパーソナライズの手法は、乗務員と乗客にとって脅威だ」と語る。スマートフォンのアプリケーションでサービスを提供するUberをはじめとする企業がアルゴリズムを使い、自社にとって都合の良い運賃や賃金を設定できるからだ。「乗客や乗務員といった利害関係者に対する透明性の確保と、英ロンドン交通局(TfL)による十分な規制と監督によってしか、アルゴリズムの悪用を防ぐことはできない」と同氏は述べる。
第3回は、ADCUが訴えるアルゴリズムの危険性について整理する。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
3
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
4
“アジャイルの壁”に挑むオリックス生命がIBMの開発管理ツールを選んだ理由
-
5
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
6
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
7
ライオンが挑む「守りのIT」脱却:Google Cloudで加速させるデータ駆動型経営
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
9
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
10
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー