静かに世界で進んでいた「“危ないAI”規制」の実態とは?AI規制の訴えと米政府の反応【後編】

米国の非営利団体が、AI技術の規制を米政府に要求する書簡を発表した。実際にはそれ以前から、各国政府はAI技術の規制に向けて動いている。具体的な動きを整理しよう。

2023年05月30日 06時15分 公開
[Makenzie HollandTechTarget]

関連キーワード

人工知能 | データ分析


 新興技術の危険性軽減を推進する非営利団体Future of Life Instituteは2023年3月、米政府に対して、人工知能(AI)技術の規制を要求する公開書簡を発表した。一方で米国政府などの各国政府はこれよりも前に、AI技術の規制に乗り出している。その実態とは。

既に始まっていた「AI規制」の現状

 「AI技術の規制に関する重要な政策構想は、既に世界で始まっている」。シンクタンクBrookings Institutionで、AIおよび新興技術研究部門のディレクターを務めるクリス・メセロール氏は、そう説明する。メセロール氏は具体的な動きとして、欧州連合(EU)の「Artificial Intelligence Act」(AI Act)や米国の「Blueprint for an AI Bill of Rights」などを例に挙げる。

 EUのAI Actは、AIツールを危険性の種類ごとに分類する。例えば「求人応募者をランク付けする履歴書スキャンツール」を「危険性が高いAIツール」に分類する、といった具合だ。危険性が高いAIツールを開発するベンダーは、技術に関する法的要件に従わなければならない。AI Actは、2023年中に可決される見込みだ。

 米国のBlueprint for an AI Bill of Rightsは、判断の偏り(バイアス)を引き起こすアルゴリズムの不備など、AIモデルの倫理的問題に焦点を置く。現状はガイドラインの役割を果たすが、将来的には米国のAI技術規制の基となる可能性がある。

 ニューヨーク州、メリーランド州、イリノイ州の各州政府は、AI技術を使用して求職者の採用を自動化するツールを規制する法律を可決。他にも米国は2023年1月に、National Artificial Intelligence Research Resource(NAIRR)の設立計画の概要を発表した。NAIRRは、AI技術研究のためのデータやツールの利用機会拡大を目的とする研究機関だ。

 メセロール氏は、Future of Life Instituteの公開書簡について「AI技術に関する、根本的に新しいガバナンス体制の構築を前提としている」と説明する。こうした前提は「全くの間違いだ」というのが、同氏の主張だ。むしろ進行中の立法を迅速化し、規制を強化することが必要だと同氏は説明する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...