投資ファンドによる東芝の買収は、ストレージ分野にも何らかの影響を与える可能性がある。東芝が出資するキオクシアのSSD事業も関連する話題だ。この先を考える。
投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)による買収提案を受け入れることにした東芝。ストレージの“成長株”であるSSDを手掛けるキオクシアは、2017年に東芝のフラッシュメモリ事業を分社化して誕生したベンダーだ(設立当時の社名は東芝メモリ)。東芝の買収は、SSD分野にどう影響するのか。
調査会社Objective Analysisで半導体分野のアナリストを務めるジム・ハンディ氏の見方は冷静だ。「JIPによる東芝買収の影響がキオクシアに及ぶことはない」とハンディ氏は語る。
キオクシアは東芝のフラッシュメモリ事業を継承したベンダーだが、東芝が経営の主導権を握っているわけではない。キオクシアの親会社キオクシアホールディングスの筆頭株主は、投資ファンドのBain Capitalだ。
「キオクシアにとって東芝は出資者で、それ以上ではない」とハンディ氏は語る。JIPの傘下に入る東芝は、今後もキオクシアの出資者としての役割にとどまると考えられる。
調査会社Coughlin Associatesのプレジデントを務めるトーマス・カフリン氏も、ハンディ氏の見解に同意する。東芝の経営者が交代してもストレージ事業への影響はほとんどない、というのがカフリン氏の見方だ。「東芝の新たな経営陣がキオクシアの保有株式を売却して現金化する必要がない限り、大きな影響はない」(同氏)
東芝の経営陣が資金を必要とするのであれば、話は別だ。「その場合はキオクシアをはじめとする収益性のある企業の株式売却など、さまざまな要素を考慮しなければならない」。ストレージ関連のコンサルティング会社Silverton Consultingのプレジデントを務めるレイ・ルケージ氏はそう話す。
キオクシア側にもM&A(合併・買収)の話がある。NAND型フラッシュメモリ分野で協力するWestern Digitalとキオクシアが合併するという話が、以前から取り沙汰されている。2023年に入ってからも同様の話は浮上しているが、何か決まったことがあるわけではない。
後編は調査会社の見解を基に、東芝およびHDD市場の今後を占う。
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