QLCによるSSDの登場とともに、その存在が脅かされてきたHDD。QLCの活用が広がる中、いよいよHDDの存在意義を考えなければならない状況になりつつある。HDDは、もう終わりなのか。
HDDの終わりは近いのか――。1つのメモリセルに4bitを格納する記録方式「QLC」(クアッドレベルセル)のSSDの活用が進む中、これは非常に興味深い問いになりつつある。ここですぐに「イエス」と言い切ってしまいたいところだが、まずは市場背景を説明した上で、改めてこの問いへの答えを示そう。
QLCになることで、SSDの容量単価はHDDの容量単価に近づく傾向にある。HDDの存在意義を議論する際、QLCの活用状況がよく引き合いに出されるのはそのためだ。
ストレージベンダーのNetAppは2023年2月、QLCを採用することでSSDの容量当たりのコスト効率を高めることを重視したストレージ製品群「NetApp AFF C」を発表した。SSDをより幅広い用途に使う取り組みにおいて、同社は重要な一歩を踏み出したことになる。QLCを採用したストレージ製品を提供するのは同社ばかりではない。
HDDの分野でも技術革新は続いている。QLCの活用が広がったからといって、企業におけるHDDの利用がすぐになくなるとは言えない。ただしHDDよりもSSDの方がデータにアクセスする際のレイテンシ(遅延)を抑えやすいため、容量単価がさほど違わないのであれば、企業にとってSSDに投資する価値は十分にあると言える。
大容量のデータ保管のコストを抑制するのであれば、SSDではなくHDDを選択するのが従来の一般的な考え方だ。だがSSDの容量単価がHDDに近づくほど、そうした用途においてもSSDを使うべき理由が大きくなる。構造化データと非構造化データをまとめて保管する「データレイク」においても、SSDを使う動きは珍しいものではなくなっている状況だ。
SSDは、データの読み書きなどのパフォーマンス、故障の発生しにくさ、運用の簡素さといった点でメリットを得やすい。それを考えれば、企業は保有する全ての本番用ストレージを、SSDに変えてもいい。
持続可能性(サステナビリティ)の優先度が高まる中では、消費電力を抑制する視点も浮上する。一般的に、SSDはHDDよりも消費電力を抑えやすいため、SSDを使うべき理由は、かつてないほどに高まっている状況なのだ。
以上の点を踏まえて、もう一度問おう。
QLCの台頭は、HDDの終わりを意味するのか――。企業のオンプレミスのデータセンターにおいては「イエス」だ。オンプレミスのストレージは、全てSSDで問題ない。とはいえ、HDDの技術は引き続き一定の役割を担うと考えられるため、完全なイエスではない。特にクラウドサービスのデータセンターでは、今後もHDDが使われる。
オンプレミスのデータセンターとクラウドサービスのデータセンターではSSDとHDDの採用状況が異なり、今後は双方においてSSDとHDDのバランスに不均衡が生じる。この先、オンプレミスのデータセンターではSSDを導入する動きが勢いづくと考えられる。
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