SSDはHDDと比べて優れている点が幾つかあるが、コストパフォーマンスではまだHDDの方が優位だ。「手ごろだから選ばれる」HDDは、その強みをいつまで維持できるのか。
かつてはストレージの主役だったHDDは、SSDの普及によって役割が変わりつつある。なくなることはないと専門家はみるが、今後どうなるのか。2.5型HDDの運命を考えた第4回「『2.5型HDD』が消えそうでなかなか消えない“あの理由”」に続き、第5回となる本稿は、1つのメモリセルに4bitの情報を保存する「QLC」(クアッドレベルセル)のSSDによる脅威に焦点を当てる。
コスト面でのメリットについて言えば、SSDの中で最も容量単価が低いQLCよりHDDの方が1TB当たりのコストが安い。だがデータ読み書き速度などのパフォーマンスに関しては、比較にならないくらいQLCのSSDの方が優れている。QLCのSSDとHDDのコストが同程度になるのはいつか。QLCのSSDが普及するとHDDの需要はどうなるのか。ストレージ業界の専門家に聞いた。
調査会社IDCのリサーチバイスプレジデント(インフラシステム、プラットフォームおよびテクノロジーグループ部門)、エリック・バーガナー氏 パフォーマンスについてSSDがHDDより優れている理由はたくさんある。SSDの容量単価がHDDと同じだったら、誰もHDDを購入しない。SSDは少しずつ価格が下がっているものの、まだHDDほど安価ではない。それでもSSDのパフォーマンスを評価し「使ってみよう」と考える企業は増えると考えられる。
ストレージベンダーSeagate TechnologyのCTO(最高技術責任者)室シニアディレクター、コリン・プレスリー氏 大手企業はシステム全体の総所有コスト(TCO)を重視して製品導入を検討する傾向にある。ストレージはTCOの方程式の一要素にすぎない。大手企業はこうした要素をパズルのように一つ一つ組み合わせて全体としてコストを抑えるようにしている。
NAND型フラッシュメモリを使ったSSDを純粋なストレージデバイスとして使用するのは、パフォーマンスが無駄になるため理にかなわないことがある。SSDが提供するストレージインタフェースの帯域幅(単位時間のデータ転送量)は、用意できるネットワークの帯域幅をはるかに上回ることがある。こうした場合は、必要な分のSSDとDRAM(Dynamic Random Access Memory)に加え、HDDを併用する方法がベストだと考えられる。
Seagate Technologyのプリンシパルプロダクトマネジャー、シナン・シャヒン氏 肝心なのは、1TB当たりのコストをどのように評価するかだ。1TB当たりのコストについては、HDDを選ぶのが最も経済的な方法であることは変わらない。2基のアクチュエータ(電気信号を物理的な動きに変換する仕組み)を備えるデュアルアクチュエータ技術によって、HDDの読み書き速度は向上すると見込まれている。こうした進化と優れたコストパフォーマンスを武器に、HDDは今後も「手ごろなストレージ」として選ばれることはあるとみる。
第6回は、「HDDはなくなるのか」への回答を探る。
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