投資ファンドによる買収提案を受け入れることにした東芝。今後の関心は同社の再建が進むのかどうかと、ストレージ分野にどのような影響があるのかだ。
東芝の取締役会は、投資ファンドによる150億ドルの買収提案に応じることにした。1875年創業の巨大複合企業である東芝は、さまざまな事業を手掛けており、その中にはHDDをはじめとしたストレージ事業も含まれる。この買収はストレージ市場に、どのような影響をもたらすのか。
2023年3月、東芝の取締役会は、日本産業パートナーズ(JIP)を中心とする日本企業連合による買収提案を受け入れることに決めた。JIPは、東京に本社を構える投資ファンドだ。東芝は上場廃止になるとみられる。
東芝は2015年に発覚した不正会計によって、業績の大幅な修正を余儀なくされ、それから再建できないまま何年も迷走する状態が続いた。2017年には、原子力発電関連の子会社Westinghouse Electric(ウエスチングハウス)の経営破綻に起因する、巨額損失に見舞われた。
そうした中で浮上した東芝の買収劇。ストレージ分野でこの話題への関心が集まる理由は、同社が世界のストレージ市場において忘れてはいけないベンダーの一社だからだ。調査会社Statistaの調べによると、2022年のHDD市場における東芝の市場シェア(出荷台数ベース)は20%だった。同社はSeagate TechnologyとWestern Digitalに次ぐ、世界3番手のHDDベンダーだ。
東芝は、SSDやNAND型フラッシュメモリを手掛けるキオクシアの親会社、キオクシアホールディングスの株式40.64%を保有する企業でもある。そもそもキオクシアは、東芝のフラッシュメモリ事業を分社化して誕生した(設立当時の社名は東芝メモリ)。
今後の問題は、JIPによる買収で、東芝の再建が進むのかどうかという点と、その動きがストレージ市場にどのような影響を生むのかに尽きる。ストレージ関連のコンサルティング会社Silverton Consultingのプレジデントを務めるレイ・ルケージ氏は、今回の買収が東芝にとっての大きな変革の始まりになり、同社の再建が進む可能性があるとみる。
再建を目指す企業は、売却する事業と維持する事業を見極め、さらには組織の再編も含めて自社にメスを入れなければならない。それが東芝のストレージ事業にどのような影響をもたらすのかが問題だ。
ルケージ氏は、今回の買収が東芝のHDD事業や、キオクシアのフラッシュメモリ事業に大きく影響する可能性は低いとみる。だが東芝にはHDD事業を売却するという選択肢もあり、簡単に結論は出せない。
中編はキオクシアに与える影響も含めて、今回の買収をさらに深堀りする。
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