「AI」が臨床医療で急速に普及 診断だけではない用途とは?医療現場で活躍する「AI」の役割【第2回】

臨床医療のさまざまな場面で、医療従事者がAI技術を活用したツールを使う機会が広がりつつある。どのように活用しているのか。実際の用途を幾つか紹介する。

2023年06月15日 06時15分 公開
[Mary K. PrattTechTarget]

 医療現場で人工知能(AI)技術を活用する機会は拡大しており、この流れは止まらないと考えられる。医療従事者は今、AI技術をどのように活用しているのか。

医療の最前線で「AI」はこう使われている

 臨床で使うPCやモバイルデバイスはAI技術を搭載するようになり、医療従事者は当たり前のように業務でAI技術を活用するようになった。集中治療室(ICU)のコマンドセンター(注1)の中にはAI技術を駆使して患者データを分析し、危機があれば警告する仕組みを構築しているところがある。

※注1 電子カルテをはじめとする各種医療情報システムのデータを1カ所に集約する、司令塔としての役割を持つ場所や仕組み。

 血圧や心拍といった患者のバイタルサインを医療機関の内外でモニタリングする装置に、AI技術を実装する動きがある。患者のトリアージ(重傷度や緊急度に応じた治療優先度の振り分け)、病気の診断、適切な治療計画の策定にも、AI技術が活躍している。

 医療情報管理システム学会(HIMSS:Healthcare Information and Management Systems Society)でバイスプレジデントを務めるジュリアス・ボグダン氏は、医療機関におけるAI技術の主な用途を以下のように説明する。

  • 遠隔患者モニタリング
    • バイタルサインのデータを取り込み、分析して、異常値があれば適切な当事者に連絡する仕組み。一般的に、血圧計や心電図モニターといった医療機器からのデータを分析して、異常値を監視するためにAI技術を使っている。
  • 診断および医用画像解析
    • 個々の患者データと、その患者以外の大規模な症例データベースを照らし合わせ、解析する仕組み。AI技術は、医師が医用画像を正確に解釈し、精度の高い診断を下すのに役立つ。
  • 治療計画の策定
    • AI技術を用いて患者固有のプロフィールを分析することで、一人一人に最適化した医療介入の方針を策定する。
  • 患者エンゲージメント
    • 患者自身に、自ら積極的に治療について学習したり、最適な医療を選択したりして関与してもらうこと。AIチャットbotを活用して、患者への情報提供、診療予約のスケジュール調整、来院前の受け付け手続きなどを効率化できる。
  • 慢性疾患管理
    • 患者のモニタリングや結果のフィードバック、疾患進行の早期兆候を検知した際の警告などにAI技術が役立つ。

 次回は、医療従事者にAI技術がどのように受け入れられているかに関する調査結果を紹介する。

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