HDDが使われなくなって「テープ」がまさかの“大復活”か?ストレージの進化が未来を変える【前編】

テープストレージは時代遅れの存在なのではなく、むしろ今後の有望なストレージの候補に挙がるべき存在だ。テープストレージの未来は明るい。その理由とは。

2023年07月13日 05時00分 公開
[Paul KirvanTechTarget]

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 重要なアプリケーションやデータのストレージとして、企業は「SSD」や「HDD」を使用しているが、この状況が今後も続くとは限らない。磁気テープの規格「LTO」(リニアテープオープン)を含めて、各種ストレージ技術の進化が見込まれる中で、特にHDDは大きな変化にさらされる可能性がある。今後の進化を踏まえて、何が起こり得るのかを予測する。

HDDが使われなくなって「テープ」が“復活“? その理由とは

 LTOを策定する業界団体「LTO Program Technology Provider Companies」(TPCs)が公表するロードマップに盛り込まれている「LTO-14」は、1つのテープカートリッジ当たりの容量が圧縮時で1.44PB、非圧縮時で576TBとなる。「1PB超え」という巨大な容量は、将来的なストレージのニーズに応える存在として期待できるばかりか、HDDの立ち位置に無視できない影響を与える。

 企業の保管データ量が今後も増え続けることを前提にすると、容量の伸びがSSDやテープストレージほどには見込まれないHDDは、現状ほどには使われなくなる可能性がある。HDDも将来的に、より大容量になると考えられる。ただし継続的な大容量化のためには、フォームファクタ(形状やサイズ)を変更しなければならない可能性がある。そうなると、既存のストレージ製品との互換性を保てるかどうかが懸念点となる。

テープストレージが“トレンド”になり得る理由

 テープストレージは、LTO-14になってもフォームファクタは変わらない見込みだ。それ以外にも、他のストレージと比較した場合、テープストレージには以下のような利点が見込める。

  • SSDやHDDと比較して、容量単価を安く抑えられる傾向にある
  • 電力コストが膨らみにくい
  • LTO規格は下位互換性(前世代の規格との互換性)がある
  • 数十年規模での長期利用が期待できる
  • 保管場所の安全を確保することで、破壊行為の可能性を抑制できる

 こうした利点があるテープストレージは、データの長期保存やアーカイブのための記録媒体として使われてきた。一方で近年、テープストレージの利用が再び活発になったことには、他に幾つかの理由が関係している。昨今は、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)をはじめとしたサイバー攻撃から重要なデータを保護する目的で、テープストレージの役割が広がった。テープストレージは、データを使用するとき以外はネットワークから切り離して保管することが基本になるため、他のシステムから隔絶してデータの安全性を確保する「エアギャップ」を物理的に作りやすいからだ。

 テープストレージの活用が広がったもう一つの理由が、データをファイル単位で扱えるようにするファイルシステム「LTFS」(Linear Tape File System)の存在だ。LTFSをテープライブラリ(ロボットがテープカートリッジの出し入れを担う大型のテープストレージ)で利用可能にする仕組み「LTFS-LE」(Linear Tape File System-Library Edition)もある。これによって、テープストレージは非アーカイブ用途としても使いやすくなる。


 後編は、テープストレージが将来的に実現する可能性のある“期待の進化”を取り上げる。

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