うわべだけで実際には「多様性がない会社」に共通する特徴とは?IT業界でD&Iが進まない理由【第4回】

人種差別の解消に向けて、IT業界は多様な背景の人材を受け入れつつあるが、「問題はそれだけでは解決しない」と専門家は指摘する。何が欠如しているのか。

2023年08月10日 05時15分 公開
[Cath EverettTechTarget]

関連キーワード

人事


 IT業界をよく知る人事分野の専門家は、ダイバーシティー(多様性)、エクイティー(公平性)、インクルージョン(包摂性)を意味する「DEI」をIT業界が実現する道のりは長いと考えている。ITコンサルティング企業Avanadeのチーフダイバーシティーオフィサーであるハラム・サージェント氏は「有色人種の従業員が直面する問題は、組織構造に起因することが珍しくない」と指摘する。DEIを欠く企業は、どこに問題があるのか。

IT業界のDEIはなぜ実現しない?

 サージェント氏は次のような例え話を使って説明する。池で魚が1匹か2匹死んでいたら、病気になったと考えるのが普通だ。水槽で魚がたくさん死んでいたら、水に問題があったのではないかと考えるはずだ。つまり、魚(人)ではなく水(環境)が重要だ。エスニックマイノリティー(地域や社会における少数民族)が活躍できるように、企業は環境を整備しなければならない。エスニックマイノリティーの人材を適切に配置したり、昇進させたりする仕組みづくりが必要ということだ。

 現状は、エスニックマイノリティーの従業員が働き続けられるよう、十分な努力をしない経営者があまりにも目立つ。「多様な人材を採用する方針をさまざまな企業が採用しつつあるが、その人材が働き続けるための仕組みづくりはそれほどうまくいっていない」と、サージェント氏は指摘する。一般的に、エスニックマイノリティーや女性がシニアリーダー(上級職)に到達するまでの道のりは、平たんとは言えない。上級職への昇進の前に、大きな“崖”がある。

 多様な人材を採用できているから良いわけではないのだ。この点については、人種差別解消を専門とする人事アドバイザリー企業HR rewiredの創設者兼マネージングディレクターであるシェリーン・ダニエルズ氏も同意する。ダイバーシティーの実現に向けた努力は、多様な人材が定着しているかどうかに反映するという。「もしあなたの会社が『ダイバーシティーを実現できている』と自画自賛しているのなら、エスニックマイノリティーの定着率を確認してほしい」(ダニエルズ氏)


 第5回は、「エスニックマイノリティーの問題は人それぞれ異なる」という点を踏まえて、実施すべき具体的な施策を紹介する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

辞めないけど頑張らない「静かな退職」が広がる理由

「辞める気はない。でも、頑張る気もない」――今、静かに広がる“働かない働き方”が注目されている。職場で何が起きているのか。

比較資料 アイティメディア広告企画

ユーザーレビューに見る、タレントマネジメントシステムの選び方【2025年夏版】

社内の人材情報を効果的に活用するための方法として、タレントマネジメントシステムの導入が広がっている。しかし、さまざまな製品が登場する中で、自社に適した製品をどう選べばよいのか。そのヒントを紹介する。

製品資料 株式会社カオナビ

失敗しない「人事評価システム」の選び方、導入検討時に必要な3つの視点とは?

「人事評価システム」は、評価業務の運用負荷を軽減するだけでなく、人材マネジメントや組織力の強化にもつながるツールの1つだ。導入を検討する際に押さえておきたい「導入目的」「選定基準」「運用方法」の3つの視点について解説する。

製品資料 株式会社カオナビ

多様な人事課題に対応、戦略人事を加速させるタレントマネジメントシステムとは

「タレントマネジメント」の重要性と必要性が高まる中、その実践に向けシステム導入の動きが広がっている。社員情報の一元管理だけでなく、多様な人事課題にも対応し戦略人事の加速につながるタレントマネジメントシステムを紹介する。

市場調査・トレンド 株式会社リンクアンドモチベーション

従業員エンゲージメントの向上が収益性と生産性にもたらす効果

限られた人材で成果を最大化することが企業経営の重要な課題となった。そこで近年、経営の新たな指標として注目されているのが従業員エンゲージメントだ。本資料では、これを高めることでもたらされるメリットを解説する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...