英国のIT業界団体の調査によれば、IT技術者として働くエスニックマイノリティーは、白人グループよりも上級職に就きにくい傾向にある。その実態とは。
IT業界のダイバーシティー&インクルージョン(D&I:人材の多様性を広げ、それを受容する文化を形成すること)は課題として認識されつつあるが、改善への道のりは長い。
英国のIT業界団体Tech Talent Charter(TTC)が発行する調査資料「Diversity in Tech」の2022年度版によると、TTC加盟企業のIT技術者として働く13万7000人のうち、エスニックマイノリティー(地域や社会における少数民族)の占める割合は25%だった。これに対して上級職に就くIT技術者のうち、エスニックマイノリティーの割合は回答を得た調査対象者の13%にとどまった。同様の傾向を示すデータは他にもある。
英国コンピュータ協会(BCS:British Computer Society)が2020年に公開した調査レポート「BCS Diversity Report 2020: ONS Analysis」でも同様の傾向が見られる。同調査の対象になったIT技術者のうち、2019年時点で中間管理職に就いている割合は、エスニックマイノリティーグループが32%だったのに対し、白人グループは43%だった。一方でIT技術者のうち、大学の学位やそれ以上のレベルの高等教育を修了している割合は、エスニックマイノリティーグループで85%だったのに対し、白人グループでは66%だった。
エスニックマイノリティーの従業員が上位職に就くことを妨げている障壁は何か――。この問題についてIT企業の経営層は理解し、解決に向けて真剣に取り組む必要がある。
IT人材採用コンサルタント企業Templeton and Partnersのマーケティングディレクターであるエイミー・トレジャー氏は「問題に対する認識は以前よりも広まっている」と語る。ダイバーシティー(多様性)、エクイティー(公平性)、インクルージョン(包摂性)を意味する「DEI」が収益を向上させるために重要であることを企業が認識するようになり、DEIへの投資は広がっている。一方で、トレジャー氏は「問題はどのようにDEIを達成するかだ」と指摘する。
第2回は人種格差の実態について、人事アドバイザリー企業HR rewiredの創設者兼マネージングディレクターであるシェリーン・ダニエルズ氏の見解を紹介する。
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