「ChatGPT」をはじめとする生成AIの登場で、エンジニアの仕事は消えるという懸念が広がっているが、それは早まった見方だ。より賢く見るには、生成AIの現状を見極める必要がある。
AI(人工知能)ツールベンダーOpen AIの「ChatGPT」をはじめとする生成AI(テキストや画像などを自動生成するAI技術)ツールが普及する事態を受けて、生成AIが人間の仕事を奪うのではないかという懸念が広がった。その見方は時期尚早と言わざるを得ない。AIモデルをトレーニングするためのツールを提供するAnyscaleの共同創設者兼CEOロバート・ニシハラ氏は、「AI技術がエンジニアを完全に代替する事態は、少なくとも今後5年間は起きない」と話す。
だが、企業が生成AIなどのAI技術を使う動きは止まりそうにない。生成AIの現状を踏まえて、どうすれば企業はより賢く生成AIに関わっていけるのかを考えてみよう。
AIモデルをトレーニングする際、一般的には人間が一連の方法や手順を教える。この教師としての役割を、生成AIが担うには至っていない。
調査会社Constellation Researchでアナリストを務めるアンディ・トゥライ氏によると、生成AIのハイプサイクル(成熟度や採用度で図る技術のライフサイクル)はまだ始まったばかりだ。そのため、大規模言語モデル(LLM)のトレーニングやメンテナンスに関する課題はまだ明確になっていないという。
LMMのトレーニングには、通常は大量のデータやインフラリソースが必要になる。トゥライ氏は、ほとんどの企業はLLMをトレーニングするのに十分なデータを持っていないと指摘する。LLMのトレーニングが可能なのは、GoogleやMicrosoft、Amazon Web Serviceといったハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)に限られる、と同氏は捉えている。
ChatGPTのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)「ChatGPT API」といったサービスを使えば、LLMとシステムを比較的容易に連携できる。一方で、アプリケーション用に新しいLLMを開発する場合は、かなりのコストがかかるとトゥライ氏は指摘する。
例えば、ソースコードでインフラの構成を管理する「IaC」(Infrastructure as Code)のテンプレートを生成できるようにLLMをトレーニングした場合、投資額が成果物に見合わない可能性がある。「わざわざ自力でLLMをトレーニングする意味はあまりない」とトゥライ氏は話す。
第6回は、開発者やエンジニアとAI技術の力関係の変化について解説する。
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