“クリエイター泣かせ”ではない「画像生成AI」は何がうれしいのか?生成AIの不安はやや解消?

Getty Imagesが発表した生成AIツールは、著作権にまつわるアーティストや企業の懸念を解消できる可能性がある。それはなぜなのか。具体的な特徴と併せて見てみよう。

2023年11月16日 05時00分 公開
[Esther AjaoTechTarget]

関連キーワード

人工知能


 2023年9月25日(現地時間)、デジタル素材を提供するGetty Images社はAI(人工知能)技術を活用した画像生成ツール「Generative AI by Getty Images」(生成AI by Getty Images)を発表した。同ツールはGPU(グラフィックス処理装置)ベンダーNVIDIAが提供する、生成AI(テキストや画像などを自動生成するAI技術)の開発キット「Picasso」の一部である「Edify」モデルを用いてトレーニングされており、教師データにはGetty Images社の画像サービス「Getty Images」のコンテンツのみを使用する。

 「Getty Images社の発表は、生成AIの現状に満足していないアーティストや企業に希望を与えるものだ」。ノースイースタン大学(Northeastern University)で「責任あるAI」(公平性や透明性、安全性の確保を考慮したAI技術)の教育カリキュラム担当ディレクター兼ビジネス担当主任を務めるマイケル・ベネット氏はそう話す。自分の作品が生成AIのトレーニングに不正に使用されたり、商用利用されたりすることについて、不満を感じるアーティストは少なくない。この状況は今後どう変わる可能性があるのか。

ピンチをチャンスに変えた画像生成AI

 生成AI by Getty Imagesのライセンスの一つである「ロイヤリティフリーライセンス」を購入したユーザーは、生成した画像を商用利用する際の著作権侵害リスクを防ぐことができる。Getty Images社は、生成AI by Getty Imagesで生成した画像は、Getty Imagesや同社の画像サービス「iStock」のコンテンツに追加されることはないことを保証する。トレーニングに用いるコンテンツの制作者には報酬が支払われる。

 Getty Images社は2023年2月、Getty Imagesのコンテンツを画像生成AIツール「Stable Diffusion」の開発に使用したとして、オープンソースAIベンダーStability AIに対して訴訟を起こした。「Getty Images社はStability AIへの訴訟を通して、画像生成分野は同社にとって脅威であるだけでなく、新たな商機であることに気付いた」とベネット氏は話す。

 調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるウィリアム・マッケオン・ホワイト氏はGetty Images社の動きについて次のように評価する。「同社が所有するコンテンツの知的財産権を改めて主張するだけでなく、所有するコンテンツを生成AIという新しい分野で活用することができる」

 Getty Images社とNVIDIAの提携では、両社間において利害対立がない点が重要なポイントとなる。両社はお互いの市場に進出することは考えておらず、金銭的な動機も一致している。この関係は全ての企業に当てはまるわけではない。

「権利を保障する生成AI」がもたらすメリット、残る懸念

 Getty Images社がアーティストの代理人となり、作品に商用ライセンスを付与することは、アーティストの満足度向上につながる。企業としても、自社で雇用するアーティストが退職する際の著作権にまつわる潜在的な懸念や発生するコストを抑えることができるメリットがある。

 一方で、生成AIを巡る倫理的懸念はまだ残る。アーティストにとって、生成AIの普及は自身の仕事を奪う新たな脅威であることに変わりない。生成AIは、遅かれ早かれアーティストに取って代わる可能性があるとベネット氏は指摘する。

 Getty Imagesにとってもう一つの課題は、生成AIツールユーザーの多様なニーズに応えることだ。例えば、以下のような事項が挙げられる。

  • よりイメージに合う画像になるよう出力結果を調整する方法を用意する
  • 出力結果にバイアス(偏見)が含まれていないようにする
  • 継続的にトレーニングデータを更新する

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 Splunk Services Japan合同会社

金融サービス業界のレジリエンス向上、AI活用の有効性とその実装方法とは

イノベーションの加速とともに、セキュリティやレジリエンスの維持などさまざまな課題が顕在化している金融サービス業界。課題の中身を確認しながら、その解決策として期待されるAI活用の有効性や実装方法を紹介する。

市場調査・トレンド Splunk Services Japan合同会社

金融業界におけるAIと機械学習の活用が進む中、解消しておきたい5つの誤解とは

金融業界においてAIツールの活用が進んでいる。一方で、セキュリティ面の不安を抱えている金融サービス企業は少なくない。このような懸念は、リスクとメリットを考慮して、AIと機械学習の戦略を策定することで解消できる。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

AIには代替できない「ITエンジニア職」はこれだ

AI技術は進化を続け、人間の仕事の一部はAIによって代替可能になる。AI技術に代替されにくいITエンジニアの職種とは何か。ITエンジニアはどのようなキャリアを歩むべきなのか。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

AI活用を加速させる、スーパーコンピューティングの実力

AI活用には処理スピードが重要となる。特に、大規模言語モデルのトレーニングでは、長期的に稼働できる強力なコンピュート性能も求められる。そこで注目したいのが、AIモデルのトレーニングを加速させるスーパーコンピューティングだ。

製品レビュー 日本ヒューレット・パッカード合同会社

開発や分析の多様なニーズに応えながら、組織全体にAIを導入する方法とは?

AIを使ったイノベーションの推進が期待されているが、組織全体にAIを導入するためにはいくつかの課題を解消することが必要だ。開発や分析を担うエンジニアやデータサイエンティストのニーズに応えながら、組織全体にAIを導入する方法とは?

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

“クリエイター泣かせ”ではない「画像生成AI」は何がうれしいのか?:生成AIの不安はやや解消? - TechTargetジャパン エンタープライズAI 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。