Getty Imagesが発表した生成AIツールは、著作権にまつわるアーティストや企業の懸念を解消できる可能性がある。それはなぜなのか。具体的な特徴と併せて見てみよう。
2023年9月25日(現地時間)、デジタル素材を提供するGetty Images社はAI(人工知能)技術を活用した画像生成ツール「Generative AI by Getty Images」(生成AI by Getty Images)を発表した。同ツールはGPU(グラフィックス処理装置)ベンダーNVIDIAが提供する、生成AI(テキストや画像などを自動生成するAI技術)の開発キット「Picasso」の一部である「Edify」モデルを用いてトレーニングされており、教師データにはGetty Images社の画像サービス「Getty Images」のコンテンツのみを使用する。
「Getty Images社の発表は、生成AIの現状に満足していないアーティストや企業に希望を与えるものだ」。ノースイースタン大学(Northeastern University)で「責任あるAI」(公平性や透明性、安全性の確保を考慮したAI技術)の教育カリキュラム担当ディレクター兼ビジネス担当主任を務めるマイケル・ベネット氏はそう話す。自分の作品が生成AIのトレーニングに不正に使用されたり、商用利用されたりすることについて、不満を感じるアーティストは少なくない。この状況は今後どう変わる可能性があるのか。
生成AI by Getty Imagesのライセンスの一つである「ロイヤリティフリーライセンス」を購入したユーザーは、生成した画像を商用利用する際の著作権侵害リスクを防ぐことができる。Getty Images社は、生成AI by Getty Imagesで生成した画像は、Getty Imagesや同社の画像サービス「iStock」のコンテンツに追加されることはないことを保証する。トレーニングに用いるコンテンツの制作者には報酬が支払われる。
Getty Images社は2023年2月、Getty Imagesのコンテンツを画像生成AIツール「Stable Diffusion」の開発に使用したとして、オープンソースAIベンダーStability AIに対して訴訟を起こした。「Getty Images社はStability AIへの訴訟を通して、画像生成分野は同社にとって脅威であるだけでなく、新たな商機であることに気付いた」とベネット氏は話す。
調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるウィリアム・マッケオン・ホワイト氏はGetty Images社の動きについて次のように評価する。「同社が所有するコンテンツの知的財産権を改めて主張するだけでなく、所有するコンテンツを生成AIという新しい分野で活用することができる」
Getty Images社とNVIDIAの提携では、両社間において利害対立がない点が重要なポイントとなる。両社はお互いの市場に進出することは考えておらず、金銭的な動機も一致している。この関係は全ての企業に当てはまるわけではない。
Getty Images社がアーティストの代理人となり、作品に商用ライセンスを付与することは、アーティストの満足度向上につながる。企業としても、自社で雇用するアーティストが退職する際の著作権にまつわる潜在的な懸念や発生するコストを抑えることができるメリットがある。
一方で、生成AIを巡る倫理的懸念はまだ残る。アーティストにとって、生成AIの普及は自身の仕事を奪う新たな脅威であることに変わりない。生成AIは、遅かれ早かれアーティストに取って代わる可能性があるとベネット氏は指摘する。
Getty Imagesにとってもう一つの課題は、生成AIツールユーザーの多様なニーズに応えることだ。例えば、以下のような事項が挙げられる。
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