生成AIによる著作物利用の対価を求めるのは、それで生計を立てる作家にとって当然の権利と言える。きちんとした仕組み作りはAIベンダーにとっても重要だ。
テキストや画像を自動生成するAI(人工知能)技術「ジェネレーティブAI」(生成AI)に著作物を利用された作家に対する補償という考え方に、違和感を持っている識者はいる。作家で、米コネチカット州ハートフォードのトリニティカレッジ(Trinity College)で英語学科准教授も務めるイーサン・ラザフォード氏もその一人だ。
「作品の著者は著作権法によって保護される必要がある。作家とAIに関する著作権保護の強化を求めることは必要だ。しかし、その焦点は補償のみに当てられるべきではない」とラザフォード氏は述べる。
「私が心配しているのは、生成AIが作家の作品を利用して自らを強化する中で、作家がどれだけお金を得られるかという話ばかりが注目されていることだ。近視眼的に感じられる」(ラザフォード氏)
今起こっていることは、生成AIが人間を創作のプロセスから排除する、新しいタイプの文学を生み出しているように見えると言ってもおかしくない。だが、「生成AIとは関係なく、作家は自らが不可欠な存在になる方法を見つける必要がある」とラザフォード氏は述べる。
この問題は補償だけで解決できないほど重大だ。全米作家協会(Authors Guild)の代表を務めるメアリー・ラゼンバーガー氏は書簡を公開した理由について「私たちの文学や芸術を守るため」と言う。だからこそ同協会は、生成AIが生み出したコンテンツが生成AIによるものであることを明示し、ベンダーがAIモデルの訓練にどのような素材を使用しているかを開示することを求めている。その上で補償を受けることで、著者は生計を立て、新しいコンテンツを作り続けられる。
人が創造したコンテンツがなければ、AI技術は訓練のための新しい素材を手に入れられなくなる。ラゼンバーガー氏は、「それでは先細りになってしまうい、生成AIはうまく機能しないようになる。だから当然、AIベンダーも新しいコンテンツが必要だと認識している」と述べる。
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