パンデミックをきっかけに、遠隔地に居を構え必要に応じて出社する、長距離通勤を前提とした働き方が広がった。長距離通勤はどのような経緯で社会に生まれたのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が落ち着きを見せ「オフィス回帰」を掲げる企業が目立ち始めた中で広がりつつあるのが、従業員の長距離通勤だ。
長距離通勤は、米国、英国、日本、オーストラリアなど、大都市圏を持つ国々で広がりつつある。例えば米国では、フィラデルフィアからニューヨークまでの約100マイル(約160キロ)、ワシントンD.C.からボストンまでの約450マイル(約725キロ)を通勤する従業員がいる。
米国民の通勤時間について調査した米国勢調査局のレポートによると、通勤に90分以上掛けている米国民の割合は1990年時点で約1.5%だったのが、2019年には3.1%に増加した。
長距離通勤が広がった背景には、オフィス勤務とテレワークを組み合わせた働き方である「ハイブリッドワーク」の普及に加え、大都市圏の住宅コストの上昇に対する懸念、生活の質の向上に対する関心の高まりがある。20世紀後半に出現した長距離通勤は、以下の要因に伴って普及したというのが通説だ。
人材管理とモビリティーに関する事業者団体であるWorldwide ERCは2023年4月、調査レポート「Super Commutes Increase With Return-to-Office Policies」を発表した。このレポートは、パンデミック後のハイブリッドワーク普及やオフィス回帰のような職場の方針が、長距離通勤の増加に影響を与えた可能性を示唆している。パンデミック後に長距離通勤を選んだ従業員は、出社頻度は低いが移動距離が長い、つまりハイブリッドワークをする傾向にあるという。
中編は、長距離通勤のメリットとデメリットを紹介する。
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