オンプレミスとクラウドサービスの“いいとこ取り”をしてクラウドストレージを利用する企業の中には、ある理由からクラウドストレージの利用を継続できなくなる企業がある。何が問題となっているのか。
クラウドサービスの利用が広がる中でも、オンプレミスにデータやシステムを残す需要が根強くあることから、台頭してきたのが「ハイブリッドクラウドストレージ」のようなオンプレミスとクラウドサービスの混合型となる利用形態だ。オンプレミスとクラウドサービスを両方とも生かす便利な方法ではあるが、この利用形態がどのような場合でも最適なわけではない。幾つかの問題に直面して、クラウドストレージの利用をやめたり、より厳密なコストコントロールの必要に迫られたりする企業がある。
監査法人のKPMGでクラウドトランスフォーメーション担当のリーダーを務めるエイドリアン・ブラッドリー氏によれば、クラウドストレージの利用に失敗する企業の特徴は幾つかある。以下の通りだ。
クラウドストレージを使う企業にとって明らかに重要なことは、利用料金が高くなり過ぎないように、厳密に利用状況を管理することだ。「コストが理由でクラウドストレージの利用をやめて、リソース専有型のインフラに移行した企業は珍しくない」とブラッドリー氏は語る。そうした企業は、クラウドストレージから十分な価値を引き出すことができず、コストやリソースの最適化に苦労したのだ。
ハイブリッドクラウドストレージではシステムの構成が複雑になり、それが“見積もりにくさ”につながることがある。そうした事態に陥らないためには、“シンプルさ”の追求が一つの手段になる。ただしIT専門家のジュネード・アリ氏が「シンプルさの追求は人間の本質とは異なる」と指摘する通り、要件を満たすシステムを継続的に構築しながらも、将来にわたってシンプルさを保ち続けるのは容易なことではない。
「IT部門の役割とは究極のところ、適切なコストでサービスを提供し、それによってビジネスにプラスの影響を与えることだ」とブラッドリー氏は語る。端的に言えば、IT部門には当初計画したコストで必要なサービスを提供し続けることが求められる。ハイブリッドクラウドストレージの利用についてこの点を考慮すると、クラウドストレージにどれだけのコストを投じて、どういった価値を得るのかを考えなければならない。
企業はストレージを選定する際、ビジネスの要件を満たすことの他には、コストを重視し、可能な限り低コストの製品やサービスを探す傾向にある。低コストを追求する選択肢として上がるのがクラウドストレージだが、ブラッドリー氏は「クラウドストレージは必ずしもコスト面で“論理的な選択”にはならない」と警鐘を鳴らす。特に注意すべきは以下の2点だという。
オンプレミスにおけるストレージの運用やメンテナンスのコストを削減するために、できる限りクラウドストレージに移行することは一見すると理にかなっている。ただしブラッドリー氏は「クラウドストレージへの移動度合いが高まるほど発生するコストが読み切れなくなり、当初の予算を超過する恐れがある」と語る。
小売業者Ocado Groupの関連会社Ocado TechnologyのCTO(最高技術責任者)であるジェームズ・ドンキン氏は、エンドポイント(端末)の近くでデータを処理して必要なデータだけをクラウドストレージに転送する「エッジ処理」によって、オンプレミスに保存するデータ量を減らせると考えている。全てのデータをクラウドストレージに送信するのはその分のコストが掛かるし、オンプレミスストレージに保存してもほとんどアクセスしないのであれば、そのインフラは無駄になる。
ドンキン氏は一例として「保存する動画の量を減らすための仕組みが必要だ」と語る。ロボットの動画データを取得する場合、ロボットの動きを全て把握する必要はない。例えば異常を検知するのであれば通常とは異なる動きのみを確認できるようにすればよい。要は、何が有用なのかを見極めることが重要だ。
エッジ処理によって必要なデータを見極めることで、オンプレミスストレージで保管するデータ量を減らすと同時に、クラウドストレージに転送するデータ量を減らすことができる。その運用に役立つのは、例えば機械学習によって削除するデータと有用なデータを見極められるようにすることだ。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製
品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。
カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。
メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。
ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。
長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。
クラウド全盛期になぜ「テープ」が再注目? データ管理の最前線を探る (2025/4/24)
データの多様化と肥大化が加速 ファイルサーバ運用は限界? 見直しのポイント (2025/4/8)
Hyper-Vは「次の仮想化基盤」になり得るのか 有識者の本音を聞く (2025/3/14)
「生成AI」の自社運用に“ちょうどよいサーバ”の賢い選び方 (2025/3/12)
クラウドストレージは便利だけど検索性が課題? 東急建設の解決策は (2025/2/25)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。