クラウドサービスのデータ保護の責任はユーザー企業にある――。これがクラウドサービス利用時の“常識”となっているが、「Microsoft 365 Backup」はその考え方とは異なるものになる可能性がある。
Microsoftは2023年7月、同社サブスクリプション形式オフィススイート「Microsoft 365」向けのバックアップサービス「Microsoft 365 Backup」を発表した。2024年1月現在はプレビューの段階にある。クラウドベンダーは「責任共有モデル」を採用し、データ保護をユーザー企業に委ねるのが基本だ。Microsoft 365 Backupは、その考え方とは異なるものになる可能性がある。
Microsoft 365 Backupは、Microsoft 365の主要なアプリケーションに対し、バックアップとリカバリー(データ復元)の機能を提供する。SaaS(Software as a Service)を中心としたクラウドサービスの責任共有モデルでは、クラウドベンダーはサービスの可用性とインフラの維持に責任を持つのが一般的だ。データのバックアップと保護はユーザー企業の守備範囲になる。この仕組みは、クラウドベンダーを法的リスクや運用上の問題から守ることが主な目的だ。
Microsoft 365 Backupによって責任共有モデルがどう変わるかについては、セキュリティ専門家は「まだ不透明だ」と指摘する。まず、バックアップが実施しやすくなることから、Microsoft 365 Backupはユーザー企業にメリットをもたらすとセキュリティ専門家は言う。ただ、Microsoft 365 Backupがどのくらい普及するかも含め、「現時点で影響についての予測が難しい」と、米TechTarget傘下の調査会社ESG(Enterprise Strategy Group)のアナリスト、クリストフ・ベルトラン氏は語る。
そもそも、ユーザー企業側では責任共有モデルが十分に認知されていない可能性もある。昨今、SaaSの採用が広がっているが、「責任共有モデルを軽視しているユーザー企業がある」(ベルトラン氏)と言う。同氏によると、ユーザー企業は責任共有モデルの重要性を理解した上、自社でしっかりデータ保護に取り組む必要がある。
調査会社Data Center Intelligence Group(DCIG)のCEO(最高経営責任者)ジェローム・ウェント氏によれば、Microsoft 365 Backupは主に中小企業に向いている。「中小企業は難しい仕組みを使わず、メールといったデータを簡単に復元できればそれでいいと感じているからだ」(同)。ベルトラン氏も「Microsoft側も高機能バックアップの提供に舵を切る戦略ではない」とみる。
次回は、Microsoft 365 Backupによるバックアップと復元の対象を紹介する。
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