英国内務省が2023年末にAWSと締結したサービス契約料金が「今までにないほどの額」に達していることが、専門家たちの注目を集めている。
英国内務省が2023年末にAmazon Web Services(AWS)と締結した「約4億5000万ポンドの3年契約」の内容が、専門家たちを動揺させている。内務省は以前からAWSのクラウドサービスを利用しているが、今回の契約内容は「今までにないほどの大型案件」だと、専門家たちの注目を集めている。公共事業を専門とするアナリスト企業Tussellが英Computer Weeklyに公開した請求書情報によると、本契約は内務省とAWSの間で締結した契約の中で最大規模のものであり、両者が交わした過去の契約よりもはるかに高額になっていた。
Tussellのデータによると、2022年における内務省の年間支出は6590万ポンドだった。AWSに対する支払額は2016年時点で87万4691ポンドだったにもかかわらず、2023年には6440万ポンドまで膨れ上がっている。
前回締結したクラウドサービス利用契約の満了日が2023年12月11日であることと、今回の契約の発効日が2023年12月1日であることを考慮すると、今回の契約が内務省とAWSが過去数年にわたって締結しているクラウドサービス契約の「事実上の更新」であることが見て取れる。
前回の契約金額は約1億2000万ポンドに上るといわれているが、2023年12月1日から始まる今回の契約金額は約4億5000万ポンドで、ほぼ4倍に増えている。だが内務省が「クラウドサービスのコストは今後3年で急増する」と考える理由は明らかにされていない。
Computer Weeklyが政府筋から聞き及ぶところによると、契約金額は「確約利用料」ではなく、契約期間中に内務省が実際に使用するAWSサービスの使用状況によって最終支払金額が決まる。契約書に記載のある金額は現時点における評価額に過ぎないと考えられる。
Computer Weeklyは内務省に対して、今回の契約期間中にクラウドサービスのコストと使用量の増加が見込まれる理由を問い合わせたが、明確な回答は得られなかった。政府が公開する本契約の基本情報には、AWSが内務省にパブリッククラウドサービスを提供する旨を説明しているだけで、この点について推測できる情報は含まれていない。内容は、前回契約の基本情報とほぼ同じだ。
一方で、今回のコールオフ契約(注1)に関する文書(個人情報や機密情報を削除してあるもの)によると、内務省はAWSのサービスを割引価格で利用できる旨の記載がある。
※注1 英国の公共機関が資材調達をする際の契約形式の一種。フレームワーク合意に基づき、必要に応じて個別に締結する契約をコールオフ契約(Call-Off Contract)と呼ぶ。今回のようなクラウドサービスのコールオフ契約は、英国政府がクラウドインフラの調達を効率化するフレームワーク合意「Government Cloud」(G-Cloud)に基づいて締結している。
この割引は英国政府とAWSの包括契約「One Government Value Agreement」(OGVA)によるものだ。内務省がAWSと今回締結したコールオフ契約は、英国政府の調達部門Crown Commercial Service(CCS)が管轄する契約「OGVA 2.0」に基づいている。
確約利用による割引価格の枠組みを定めている契約「OGVA 1.0」は2023年10月に満了しており、2023年12月1日に更新した契約がOGVA 2.0となる。OGVA 1.0では「政府機関に対して18%の基本割引」「全額前払いでサービスの使用料を支払った政府機関には追加で2%の割引」という割引内容となっていた。2023年12月時点ではOGVA 2.0に基づく具体的な割引率は不明だったが、Computer WeeklyがCCSに問い合わせたところ、「OGVA 2.0に基づいた契約で政府機関が得られる金銭的メリットは、OGVA 1.0のメリットを大幅に上回る見込み」だという。
「AWSとCCSの間で新たに締結した契約(編注:OGVA 2.0のこと)には、全ての政府機関がその規模や発注量を問わず、AWSから直接、またはライセンス付与されたベンダー経由で、より安価にサービスを利用できる新しい割引構造が含まれている」とCCSは説明する。
専門家たちは、今回の契約がG-Cloudのフレームワーク合意に基づいていることも問題があると考えている。後編は、その理由について解説する。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
IBM i 基幹システムを運用する企業でモダナイゼーションが喫緊の課題となる中、推進の課題も多い。そこで、「クラウド」「ノーコード開発」「API」「AI」を主軸とするIBM i ユーザー向けモダナイゼーションサービスを紹介する。
小売業界にとって、顧客体験(CX)、従業員体験(EX)の向上ならびにDX推進は重要度の高い課題である。多拠点、多店舗、他業態を展開する小売業でCXとEXをグローバルに向上する次世代のリテールコマースプラットフォームとは。
ロッテはシステムのAWS移行を進める中、DX推進の鍵は内製化比率の向上にあると考え、内製化の強化に踏み切った。本資料では、内製化の実現に向け、支援を受けながら、初めて取り組んだAWS開発と人材育成を成功させた事例を紹介する。
大容量データの送受信には、通信遅延や帯域制限の課題がある。本資料では、高速で安全なデータ送信を実現できるファイル転送プラットフォームを紹介する。導入時に気になるポイントとともに、料金プランも分かりやすく解説している。
SaaSの利用が拡大する中、ベンダー側と企業側の両方がさまざまな課題を抱えている。ベンダー側は商談につながるリードが獲得しにくいと感じており、企業側は製品の選定に困難さを感じているという。双方の課題を一掃する方法とは?
「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...