オンプレミスからクラウドサービスにインフラや基幹システムを移行する企業は、何を目指し、どのような効果を期待しているのか。三重県、ニッセイ・ウェルス生命保険、建設会社の前田道路などのクラウド移行事例を紹介する。
近年、企業のITインフラや基幹システムのクラウド移行が進んでいるが、オンプレミスからクラウドサービスにそのまま移行しても成功するとは限らない。事前に課題を洗い出しておき、目的意識をはっきり持つ必要がある。実際にクラウド移行を決定した企業は、どのような効果を期待し、どのような目的意識を持っているのか。コミュニケーション基盤や基幹システム、データ分析基盤などのクラウド移行に関するニュース3本を紹介する。
三重県は「DX」(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で、「モダンなクラウドアプリを利用できるコミュニケーション基盤」の実現を掲げている。これを実現するためのコミュニケーション基盤として、Microsoftのサブスクリプションサービス「Microsoft 365」を採用した。三重県庁職員約7500人が利用している。導入はアルファテック・ソリューションズとNTTビジネスソリューションズが担当した。以前のコミュニケーション基盤は、セキュリティを確保するために仮想デスクトップ(VDI)を介してインターネットに接続する仕組みだったため、Webサイトを参照する際のレスポンスが悪く、県民からの問い合わせに即座に対応できないといった課題があった。Microsoft 365導入時は、ネットワーク構成を変更しつつ、Microsoftのクラウド型ID・アクセス管理システム「Microsoft Entra ID」(旧称:Azure Active Directory<Azure AD>)を導入。セキュリティを確保すると同時に、インターネット接続の速度を改善した。(発表:アルファテック・ソリューションズ<2023年10月>)
ニッセイ・ウェルス生命保険は基幹システムのクラウド移行プロジェクトを進めている。2023年10月に設計工程に着手し、2024年6月の導入完了を目指す。基幹システムのインフラはオンプレミスからOracleのクラウドサービス群「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)に移行する。ライセンスや運用面を含めたコストと、安定性を評価してOCIの採用を決めた。ニッセイ・ウェルネス生命保険は他システムのインフラにMicrosoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」を採用している。OCIを採用する際は、Microsoft Azureと連携して1つの“統合クラウド”として運用管理できることを事前に検証した。Microsoft Azureの運用はTISが担当していることから、OCIと併せてTISが1社で運用監視可能であることも評価した。OCIの構築もTISが支援する。(発表:TIS<2023年11月10日>)
建設会社の前田道路は、「工事管理」「合材管理」の基幹システムをオンプレミスで運用している。各システムはサイロ化(連携せずに孤立した状態になること)しており、それぞれに格納されているデータの連携ができていなかった。各基幹システムのクラウド移行を進めながら、クラウドベースのデータ統合・分析基盤の構築を決断。データウェアハウス(DWH)にクラウドDWHベンダーSnowflakeの同名サービスを、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールにウイングアーク1stのBIツール「MotionBoard」を採用した。導入はインテグレーターのジール(ZEAL)が担当。2024年度の稼働開始に向けて設計と開発が進んでいる。本番運用開始後はレポート作成における業務効率化を見込んでいる。受注案件の分析や、AI(人工知能)技術を利用した見積書作成など、経営層への情報提供や現場でのデータ活用も推進する。(発表:アバントグループ<2023年10月30日>)
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契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。
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ワークロードを最適な環境に配置できる手法として注目され、多くの企業が採用しているハイブリッドクラウド。しかし、パフォーマンス、法令順守、コストなどが課題となり、ハイブリッドクラウド環境の最適化を難しくしている。
システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
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