クラウドサービスのコスト増大といった理由から、企業は改めてオンプレミスに目を向けている。しかし「オンプレミス回帰」は手間もコストもかかり、容易ではない。企業はどのような決断を下しているのか。
クラウドサービスの利用が広がってきた一方で、クラウドサービスのコスト増大といった理由から、オンプレミスシステムにデータを戻すことを検討する企業が出てきている。
ただしオンプレミスシステムにアプリケーションやデータを移行するのには手間がかかる他、データ移行で発生するコストがあるため、その決断は容易ではない。「オンプレミス回帰」を検討する企業は、実際にはどのような選択をしているのか。
ITコンサルティング会社Dragon Slayer Consultingの創設者兼プレジデントのマーク・ステイマー氏は、「オンプレミス回帰に踏み切るかどうかは、ケースバイケースで検討すべきだ」と話す。
特にステイマー氏が注意を促すのがコスト面だ。クラウドストレージからオンプレミスストレージにデータを戻す際、コストが増大しやすい。クラウドサービスから別のインフラへのデータ送信(エグレス)に料金がかかるからだ。
クラウドベンダーの中には、エグレス料金が増大することへの対策を講じるベンダーもある。2024年1月、Googleは同社のクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)から離脱する際のエグレス料金が不要になるプログラムを発表した。ユーザーはプログラムに申請して承認を得た後、60日以内にデータを転送する必要がある。転送できなかった場合は再申請が必要になる。
とはいえステイマー氏によれば、オンプレミス回帰の流れは大きなものではない。「クラウドサービスからオンプレミスシステムに全てのデータを戻した企業の事例は、ほんのわずかしか目にしたことがない」と同氏は話す。代わりに、ミッションクリティカルなアプリケーションのみをオンプレミスシステムに移行して、クラウドストレージを重要度の低いデータの保管用や、バックアップ用に使用する企業が一般的だという。
ソフトウェアの評価サービスを提供するRealGoodSoftwareは、まさにこの取り組みを実施している最中だ。同社の創設者でCEOのブライアン・マクリンティック氏は、「重要なアプリケーションや機密性の高いデータはオンプレミスシステムに配置し、重要性の低いデータはクラウドサービスで管理している」と説明する。
次回は、実際にオンプレミスシステムにデータを移行した企業の例を紹介する。
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