開発業務における生成AIの活用が進んでいる。開発者が評価するAIツールにはどのような特徴や機能があるのか。AI時代の開発者に求められるスキルと併せて解説する。
学習データを基にテキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)の活用が急速に広がっている。生成AIの有効な使い道として期待されているのが、ソースコードの自動生成だ。
既にコーディングを支援する開発向け生成AI(以下、AIツール)は市場に登場しており、人気のツールも幾つかある。有識者によるとそれら人気のツールには主に2つの特徴がある。これから開発者に求められるようになるスキルと併せて、開発者が好むAIツールの特徴を解説する。
開発者がAIツールの導入で重視する1つ目のポイントが、「最終決定権の所在」だ。
GitHub社のソースコード自動生成ツール「GitHub Copilot」は、AI技術の適用例として業界の先陣を切っている。リポジトリ共有サービス「GitHub」のデータセットや、MicrosoftのIDE(統合開発環境)「Visual Studio Code」へのアクセス性に加えて、「提案を実装するかどうか」の最終的な判断を利用者が下せる点が人気の理由だ。こう説明するのは、開発プラットフォームベンダーAirplaneの共同創設者兼CEOラヴィ・パルク氏だ。
GitHub Copilot以外の人気なAIツールも同様の特徴を持つ。例えばTabnineのソースコード補完ツール「Tabnine」は、ソースコード記述時に適切と考えられるコードの選択肢を提示する。IBM ResearchとRed Hatが2022年10月に立ち上げた生成AIの開発プロジェクト「Project Wisdom」では、コマンドを入力するだけで自動化手順書「Ansible PlayBook」を生成できるが、結果は開発者が確認して変更できる仕様になっている。
AIツールに求められるもう一つの要素が、カスタマイズ性だ。
専門家は、「AIツールにはカスタマイズ機能が不可欠だ」と口をそろえる。AIツールは既存のシステムとの連携が欠かせない。大半の企業は何十年も前から、各社固有の独特なシステムを使用している。
調査会社Forrester Researchでバイスプレジデント兼プリンシパルアナリストを務めるマイク・グアルティエーリ氏によると、開発分野で特に有望なAIシステムは“派生モデル”だと話す。派生モデルは、OpenAIの「GPT-3」やGoogleの「Palm」といった既存のAIモデルを、異なるデータで再学習させたものを指す。
将来的には、自社のソースコードを既存のAIモデルに再学習させる手法が主流になる可能性があるという。「企業が独自にカスタマイズできる派生モデルであれば、既存システムに適したソースコードを生成可能だ」(グアルティエーリ氏)
近年、「開発者の職を生成AIが奪うのではないか」という懸念が出ている。セキュリティソフトウェア企業CurtailのCEO、フランク・ウエルタ氏はこれに対し、「すぐに生成AIがソフトウェア開発者に取って代わることはない」とコメントする。生成AIにはリスクや技術的制限がある上、人間特有の能力は生成AIですぐには代替できないからだ。
ウエルタ氏は一例として、自身も携わった、米国防高等研究計画局(DARPA)による自動運転車(Autonomous Vehicle:AV)開発を挙げる。プロジェクトで特に困難を極めたのが、人間の物体認識プロセスの再現だったという。「人間の脳はコンピュータとは異なる方法で物事を捉えるため、そのプロセスを生成を再現することは非常に難しい。生成AIが文章やソースコードを記述するプロセスについても同様だ。この点において人間は有利であり、生成AIに置き換えられるものではない」と同氏は語る。
システム開発には、共感力やコミュニケーション能力も欠かせない。「人の話に傾聴して重要なポイントを理解すると同時に、複雑な背景要因を理解するといった人的スキルが、開発の仕事には必要だ」とソフトウェア開発企業Intelliware Developmentでチーフテクノロジストを務めるB.C.ホームズ氏は話す。
このような背景から、生成AIは開発者の仕事を奪う存在ではなく、あくまで支援する存在になると予測される。「生成AIは、開発者の知識が足りない部分を補うものにすぎない」とパリク氏は語る。
次回は、AIツールの導入が、開発現場や開発者にもたらす影響を考察する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
なぜ料理の失敗写真がパッケージに? クノールが展開する「ジレニアル世代」向けキャンペーンの真意
調味料ブランドのKnorr(クノール)は季節限定のホリデーマーケティングキャンペーン「#E...
業界トップランナーが語る「イベントDX」 リアルもオンラインも、もっと変われる
コロナ禍を経て、イベントの在り方は大きく変わった。データを駆使してイベントの体験価...
SEOを強化するサイトの9割超が表示速度を重視 で、対策にいくら投資している?
Reproが「Webサイトの表示速度改善についての実態調査 2024」レポートを公開。表示速度改...