データ保存量の増加や、読み書き速度の向上といったニーズに応えるために、「磁気ヘッド」の制御に改善を凝らしたHDDがある。これによってデータ読み書きなどの性能はどれだけ向上するのか。実際の製品を参考に見てみよう。
HDDベンダーは、データ保存量の増加や、読み書き速度の向上といったニーズに応えるために、複数の視点でHDDの技術改善を続けている。Seagate TechnologyやWestern Digitalが手掛ける製品の中には、データ読み書きを担う「磁気ヘッド」の制御に改善を凝らしたHDDがある。データ読み書きなどの性能はどれだけ変わるのか。実際のHDD製品を例にしながら見てみよう。
HDDベンダー各社によれば、磁気ヘッドを制御するアクチュエーターを複数搭載する「マルチアクチュエーター」の技術によって、HDDにおけるデータ読み書きの高速化や、容量の増加が見込める。
Seagate Technologyの「Exos 2X18」は、マルチアクチュエーター技術を採用した容量18TBのHDDだ。Exos 2X18の性能は以下の通り。
Exos 2X18と、同じ容量18TBのシングルアクチュエーター搭載のHDD「Exos X18」を比較すると、性能の向上は明らかだ。Exos X18の性能は以下の通り。シングルアクチュエーターとは、アクチュエーターを1つしか搭載していない一般的なHDDの技術だ。
Exos 2X18は、最大連続データ転送速度とランダム読み取り速度ではExos X18の2倍前後の性能となっている。ランダム書き込み速度でもわずかではあるが、Exos 2X18がExos X18を上回っている。
Seagateのマルチアクチュエーター搭載HDDでは、遅延時間に関しての性能改善は見られない。同社が公表しているExos 2X18の平均待ち時間は4.16ミリ秒となっており、Exos X18と変わらない。
こうした性能の改善はある一方で、データセンターでマルチアクチュエーター搭載のHDDを採用する際は、幾つかの課題に直面する可能性がある。例えば、2つのアクチュエーターを搭載するHDDで2つの「LUN」(論理ユニット番号)のファイルを管理する場合、ストレージを制御するソフトウェアに変更が必要になる可能性がある。論理ユニットとは、データの記録領域を論理的に区分した単位だ。2つの論理ユニットにまたがる動作において、どのコマンドがどの部分に影響するのかが不明瞭になり、混乱を引き起こす可能性もある。
マルチアクチュエーター搭載のHDDがすぐに主流になるわけではない。このHDDが広く使われるに当たっては、幾つか乗り越えなければならない課題がある。例えば、マルチアクチュエーター搭載のHDDを接続するためのインタフェースとなるホストバスアダプター(HBA)の規格がうまく適合しない可能性がある。まだ市場としては特定の用途に限定されていることもあり、他の技術や仕様との親和性を欠き、ベンダーロックインに陥ることも考えられる。ただしこれらの問題は、マルチアクチュエーターの利用が広がるに従って、徐々に緩和される可能性がある。
SeagateやWestern Digitalがマルチアクチュエーター搭載のHDDを発表した際、その打ち出し方が控えめだった。この技術が企業のデータ処理のタスクにどう適応できるのか、市場がどのように反応するのかをまだ読み切れていないからだと考えられる。
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