ソーシャルメディア大手のMetaが、AI検索エンジンの開発に取り組んでいる。Googleをはじめとした検索エンジンでの検索は、もう“第一の方法”ではなくなるのか。
ソーシャルメディア大手のMeta Platforms(以下、Meta)が、AI(人工知能)技術を活用したAI検索エンジンの開発に取り組んでいることが分かった。Metaに限らず、GoogleやOpenAIも同様の方針を打ち出した。
情報を探す方法としては、市場では生成AIサービスとGoogleのような従来の検索エンジンが混在している。そうした中で業界関係者は、Metaのような企業にもAI検索エンジンでの勝機があるとみる。その背景には、消費者の行動変容がある。情報を探す方法は、どのように変わろうとしているのか。
IT関連の情報を扱うメディア「The Information」(Lessin Mediaが運営)が、MetaがAI(人工知能)技術を活用した検索エンジンの開発に取り組んでいることを報じた。Metaの狙いは、検索におけるGoogleとMicrosoftへの依存を減らすことだという。
Metaはソーシャルメディアの「Facebook」や「Instagram」などを運営する企業だ。同社が開発するAI検索エンジンは、検索クエリに応じて、AI技術によって生成した対話形式の要約をAIチャットbotを通じて提供するものになる。この一環でMetaは、通信社Reutersと記事を使用するための契約を締結した。ユーザーからニュースに関する質問があった場合、最新の情報に基づいて回答を提供できるようにするためだ。
こうしたMetaのAI検索エンジン開発が象徴するのは、これまで「検索エンジン」が中心に担ってきたWebで情報を得る方法が、大きく変わりつつあることだ。
Googleは2024年、「AI Overviews」(AIによる概要)というAI検索機能の提供を段階的に開始しており、検索の在り方をAI機能によって変えようとしている。AI Overviewsは、検索結果を予約したり、製品の比較を提供したりするなど、生成AIの機能を情報の探索に活用することができる。同社は2024年10月下旬、AI Overviewsの提供地域を100カ国以上に拡大したと発表した。
生成AIサービス「ChatGPT」の開発元であるOpenAIは2024年、AI検索エンジン「SearchGPT」を提供する計画であることを明らかにしていた。これについて同社は2024年10月31日(現地時間)、同サービスの提供を開始したことを発表した。
こうしてAI技術に関わるベンダーがAI検索エンジンに商機を見いだす中で、「Metaが同市場への参入を狙うのは当然だ」と、米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリスト、マーク・ベキュー氏は語る。
Metaはどのような需要に照準を合わせるのか。ベキュー氏は、若い消費者は年配の消費者に比べると、「Google」を開いて検索キーワードを入力する傾向が弱いと指摘する。そのためMetaのAI検索エンジンは、若い消費者向けを意識したものになると同氏はみる。
「MetaがAI検索エンジンを開発する背景には、エンドユーザーの行動の変容がある」。そう語るのは調査会社The Futurum Groupのアナリスト、リサ・マーティン氏だ。
最近の調査では、「Z世代」(1990年代後半から2000年代に生まれた世代)や「α世代」(2010年以降に生まれた世代)は、Webで情報を探すことを意味する言葉として「Google」を使わず、その代わりに「検索」という言葉を使う傾向があることが分かったという。「これは間違いなく、AI検索エンジンの競争市場を広げる要因だ」(マーティン氏)
こうした若年層の行動の変化を背景にして、MetaやOpenAIといった検索エンジン分野への新規参入者が、検索におけるGoogleの支配的な地位に挑戦できるようになっているのだ。Google自身もAIで検索の在り方を変えようとしているところではあるが、「AIによってさまざまなものが変わる中でGoogleは大きな課題に直面している」とマーティン氏は指摘する。
一方で調査会社Forrester Researchによれば、情報を探す際の媒体にも変化が見られる。10代後半から30代前半の消費者は、商品のお薦めを探す際にはECサイトの「Amazon」やショート動画共有サービス「TikTok」を使う傾向にあるという。
消費者は情報を探す手段としてGoogleではなく、多様な方法に頼るようになっているとForrester Researchのアナリスト、ニキル・ライ氏は指摘する。「その動きは、ChatGPTの人気によって間違いなく加速している」(ライ氏)
後編は、AI検索エンジンがMetaのサービスにどのような効果をもたらすのか、従来の検索エンジンの市場にどのような影響があるのかなどを考察する。
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