Micron Technologyが2024年7月に発表した「Micron 9550」は、「PCIe 5.0」のインタフェースを搭載している。このインタフェースの進化は、主に3つの利点をもたらす。
メモリやSSDを手掛けるMicron Technologyが2024年7月に発表した「Micron 9550」は、汎用(はんよう)インタフェース規格「PCI express 5.0」(以下、PCIe 5.0)に準拠したSSDだ。新世代のインタフェースを搭載することで、SSDの利用はどう変わるのか。このインタフェースの進化は、主に3つの利点をもたらす可能性がある。
半導体市場を調査するObjective Analysiでゼネラルディレクター兼半導体アナリストを務めるジム・ハンディ氏によると、タスクの処理の速さに影響する要素の一つが、プロセッサとストレージの間のデータ移動だ。このデータ移動が高速になるほど、タスクの処理も早くなる。これが1つ目の利点だ。
Micron 9550は、インタフェースにPCIe 5.0を採用することで、データ転送を高速化している。前モデル「Micron 9400」が搭載している「PCI express 4.0」(以下、PCIe 4.0)のインタフェースと比較すると、PCIe 5.0の帯域幅は2倍になる。
この特性は、特にAI(人工知能)関連の用途で有用だと考えられる。AI関連のタスクでは、AIモデルのトレーニングや改善などに膨大な量のデータやコンピューティングリソースを使うことになるからだ。
重要なのは高速さだけではない。Meta PlatformsやMicrosoftなど、AI関連のサービスを提供するためにインフラに莫大(ばくだい)な投資をしてデータセンターを運営している企業にとっては「コストも問題になる」と、ハンディ氏は2つ目の利点を挙げる。GPU(グラフィックス処理装置)は高価であるため、そのコンピューティングリソースを有効に活用できなければ、収益性を圧迫する結果になりかねない。データ転送を高速化することは、GPUのリソースをより有効に活用することにもつながる。
こうした速度やコストなどの観点を踏まえて、ハンディ氏は次のように語る。「ストレージからデータが送られてくるまでの待機時間があるためにGPUのリソースを有効に活用できていない企業があるとすれば、そうした企業はMicron 9550に飛び付く可能性がある」
Micronは、Micron 9550のメリットの一つに電力効率の良さも挙げている。これが3つ目の利点だ。例えば、グラフ構造を持つデータを扱う「グラフニューラルネットワーク」(GNN)のタスクでMicron 9550を使うことで、データの処理が高速化するメリットが得られる可能性がある。処理に必要なエネルギー使用量が増えたとしても、データの処理にかかる時間が短縮することでエネルギー使用量の削減につながるという。
「エネルギー使用量を削減できるメリットは、最初のうちは明確にはならないことも考えられる」とハンディ氏は語る。だが長期にわたって大量のSSDをデータセンターで使用することになれば、徐々にその節約効果が表れてくる可能性がある。
SSDを利用する企業がPCIe 5.0への移行を検討するのは、「GPUへの投資から最大限の価値を引き出す」ことが主な目的だとMicronは捉えている。ヤヌコビッチ氏によると、企業がAI関連のプロジェクトを検討する場合は、ストレージよりもコンピューティングの性能に目を向ける傾向にある。
そのため、あらゆる企業がPCIe 5.0準拠のSSDにすぐに投資するとは考えられない。投資するかどうかは、用途と要件、予算次第だと言える。「予算が確保できるのであれば、次の投資先として企業がPCIe 5.0を選ぶ可能性は十分にある」(同氏)
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