ネットワークを変更する前にはテストが欠かせないが、本番と同じ環境でテストできるとは限らない。そこで活躍するのがネットワークシミュレーターとエネットワークミュレーターだ。両者の違いと役割を解説する。
ネットワークの設定や構成の変更を加える前に、ネットワークエンジニアはその変更がネットワークに与える影響をテストする必要がある。本番ネットワークに変更を加えると、問題が発生した場合にダウンタイム(稼働停止時間)が発生する可能性があるため、テスト用の環境を整備することが重要となる。
可能であれば、本番ネットワークと同じ機器を使ったテスト環境を用意するのが好ましいが、難しい場合もある。そこで、活躍するのがネットワークシミュレーターやネットワークエミュレーターだ。両者の役割と違いを解説する。
ネットワークシミュレーションとネットワークエミュレーションは、どちらもネットワーク環境を再現するための技術だが、それぞれアプローチや目的が異なる。
ネットワークシミュレーターはネットワーク全体を仮想的なモデルとして再現するツールだ。モデル内では、レイヤー1(物理層)からレイヤー7(アプリケーション層)まで、ルーターやスイッチなどのネットワーク機器を含む全てのネットワーク層の要素を再現できる。新しいネットワーク構成の設計や、複雑なプロトコルの検証などに役立つ。
ネットワークシミュレーターは、ネットワーク内で発生する各イベントを時系列で処理し、以下の状態の変化を計算する。
これらの要素を計算した結果、ネットワークの以下要素への影響を確認できる。
ネットワークエミュレーターは、物理的なネットワーク全体を模倣するツールだ。ネットワークで起こりうるさまざまな事象を再現し、その条件下で、ネットワークに接続されたアプリケーションやデバイスがどのように動作するかをテストできる。主にレイヤー1およびレイヤー2(データリンク層)の挙動を模倣し、遅延やパケットロス(損失)時の挙動確認など、実運用のテストで役に立つ。
ネットワークエミュレーターが再現できる事象の例は次の通りだ。
ネットワークエンジニアはネットワークエミュレーターを利用することで、「帯域幅が広く障害が発生していない理想的なネットワーク」から、「パケットロスが頻発している劣悪なネットワーク」まで、さまざまな状況を再現してテストできる。データセンターネットワークや、古いプロトコルを利用したレガシーネットワークなど、珍しいネットワーク環境を再現する際は、専用のハードウェアが必要となる場合がある。
ネットワークのシミュレーションとエミュレーションは対立するものではなく、お互いを補完するものだ。ネットワークシミュレーターの中には、ネットワークエミュレーターの機能を内包しているものもある。
ネットワークエンジニアは両方のツールを活用することで、以下のような変更が本番ネットワークに与える影響を、事前にテストできるようになる。
ネットワークに変更を加える理由はさまざまだが、本番ネットワークを変更する前のテストは非常に重要だ。変更が適切に反映されるかどうかだけでなく、変更後に本番ネットワークの他の要素に影響がでないか、もしくは影響が出ることを前提に、それが許容範囲内かどうかを確認する必要がある。本番ネットワークのパフォーマンスや信頼性を損なうような事態は避けなければはならない。
ネットワークエンジニアは、ネットワークの設計や変更を、正確かつ効率的に検証する必要がある。ネットワークシミュレーターやネットワークエミュレーターは、このようなニーズに応えるための強力なツールであり、ネットワークの設計から運用まで、幅広い場面で活躍する。
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