人事異動で戦略変更が必要になることも
ビジネスプラン変更に伴うネットワークセキュリティ戦略の調整
社内では常に変化が起きており、セキュリティ戦略との溝が驚くほどの早さで広がることもある。
企業の情報セキュリティチームが長期的な成功を維持するためには、事業戦略とネットワークセキュリティ戦略の間のシナジーを定期的に評価することが必要だ。こうした評価が行われるのは、買収のような大きな出来事があったときだけとは限らない。社内では常に変化が起きており、溝が驚くほどの速さで大きくなることもある。ここでは、ネットワークセキュリティ戦略の見直しが必要なのはどのようなときか、どのような点を見直せばいいのか、そして経営陣とのあつれきを避けるためのノウハウを紹介する。
情報セキュリティ戦略の見直しが必要なとき
経営上層部の人事異動や昇進、製品発売やサービス提供開始により、経営の重点があっという間に変わってしまうことがある。新しい人事体系では、リスクの所在と責任がはっきりカバーされていないかもしれない。会社でこうした変化が起こるたび、ネットワークセキュリティ戦略とポリシーもそれに応じて変更し、必要な種類のセキュリティを組織に提供することが大切だ。
わたしが最近扱ったケースの中に、インターネットでの自社製品とサービスの提供に初めて乗り出した大企業があった。「会社案内パンフレットサイト」的戦略から電子商取引サイトへの切り替えには成功したが、社内ネットワークおよびインターネット上を流れる個人特定可能な情報の量は激増した。このようなネットワークトラフィック量の変化に合わせ、ネットワークセキュリティポリシーも更新する必要があった。顧客とのネットワーク接続はすべて暗号化され、ネットワークユーザーのアクセス権限が見直されて必要があれば調整され、さまざまなデータ流出検知ツールのテストも始まった。
早期の戦略対応
セキュリティ戦略がそぐわなくなる事態を避けるため、ITセキュリティの責任者は常に社内各部門とその戦略、およびそうした戦略の実行計画について把握しておく必要がある。懸念事項を見つけたり話し合うために、上層部と定期的に付き合うことだ。経営上、セキュリティ上の課題について全関係者がしっかり認識していれば、セキュリティ技術を購入して実装する際に、十分な情報に基づく判断を下すことが可能になる。例えば、新しい事業戦略の初期の段階からセキュリティが絡めば、プロジェクト開始段階でセキュリティを計画・実装することが可能になり、後になってセキュリティをねじ込もうとするよりもはるかに効果的なアプローチができる。
セキュリティ戦略の主要要素
ネットワークセキュリティ戦略の見直しは、現在のセキュリティ戦略について以下の項目に焦点を当てて検討する必要がある。
- セキュリティ上の分類に応じたデータ保護。保存されている情報、ネットワーク上を移動する情報の両方が対象となる
- 新しい脅威、浮上しつつある脅威の回避
- サービスをセキュアに提供しながらリソースを最大限に活用する
- 会社のリスク許容度に合わせる
- コンプライアンスと規制の順守
経営陣の許可
現在の情報セキュリティ戦略を大きく変えるためには、主要関係者の支持を得る必要があり、取締役レベルで承認を受けなければならない。追加予算が必要な新しいセキュリティプロジェクトは、ガバナンス推進の2大要素であるリスクとコンプライアンスに踏み込めば承認されやすくなる。わたしが最近あるクライアントに行った提案は、その会社の顧客情報を適切に保護するための法的責任についての理解が取締役会に浸透すると、すぐに承認された。
ネットワークセキュリティポリシーの変更には、円滑な運用のために新製品やサービスが必要になる場合もあるが、これは無料というわけにはいかない。セキュリティ予算を増額してもらうためには、改訂版の戦略について、効率性を高め全体のコスト削減につながる技術ベースプロジェクトといった、コスト削減戦略の一環と位置付けて提示するよう努めることだ。
ただし、セキュリティチームは組織のリスク許容度を尊重することが大切だ。会社にとってどの程度のリスクが適切かの定義において、セキュリティチームと経営陣の間に食い違いがあると、事業戦略とセキュリティ戦略に食い違いが生じることが多い。別の業界から来た新しい管理職が任命され、その人物が異なるリスク環境での事業に馴染んでいる場合、こうしたことが起きやすい。チーム間のコミュニケーションがうまくいっていなければ、過剰防衛になったり防衛不足になったりして予算が無駄になる。
進化する事業計画に沿った改定版のネットワークセキュリティ戦略を作成するのは大仕事だ。ポリシー調整のためには、ネットワークに大きく依存している全部門間のコミュニケーションと協力が必要になる。大切なのは、ネットワークセキュリティ戦略が事業の妨げになるものではなく、促進するものと見なされることだ。セキュリティ専門家は、自分や同僚の見方を変えさせる必要があるかもしれない。事業上のごく小さな変更でも、セキュリティ上の大きな脆弱性につながりかねないと考えることが大切だ。
本稿筆者のマイケル・コッブ氏は、データセキュリティおよび解析に関するトレーニングやサポートを提供するITコンサルティング会社、コッブウェブアプリケーションズの創業者兼マネージングディレクター。CISSP-ISSAP(公認情報システムセキュリティプロフェッショナル―情報システムセキュリティアーキテクチャプロフェッショナル)の資格を持つ。共著書として「IIS Security」があり、主要なIT出版物に多くの技術記事を寄稿している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社kickflow] 2社の事例に学ぶワークフロー改革:属人化解消や年数万件の申請書類削減のコツ -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 「回線速度不足」だけが原因ではない? Web会議の遅延を解決する方法とは -
製品資料
[東京エレクトロン デバイス株式会社] 工場の可用性向上に重要な「7つの領域」と対策 OTセキュリティ強化の基礎知識 -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 問い合わせ対応で本来の業務が進まない、総務や情シスの負担をどう減らす? -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 自社データから高精度な回答を生成、簡単に生成AIチャットボットを構築する方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
2
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
5
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
IT予算が10%増えたら何に使う? 著名企業のCIOが明かす「最優先の投資先」
-
8
AI活用か新たな脅威か OpenAI自律エージェントがRubyGemsを急襲
-
9
音声もFAXもメールで確認――ユニファイドメッセージの業務効果
-
10
機械学習について、正しく説明している文章はどれ?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
8
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー