実はある、基幹系をSaaSで生かせる分野SMBのためのSaaS利用術【第3回】

まだ成長段階にある中小企業の基幹系システム。とかくSaaSには向いていないといわれるが、有効にSaaS活用できる領域は確かに存在する。

2009年07月08日 08時00分 公開
[岩上由高,ノークリサーチ]

期待と現実の間には大きなギャップ

 連載「SMBのためのSaaS利用術」第3回となる今回は「基幹系システム」を取り上げる。基幹系システムとは「財務会計/管理会計」「人事管理」「給与管理」「販売管理/購買管理」「生産管理」といった企業活動の根幹をなす業務システムを指す。基幹系システムは歴史が古く、それぞれの企業で独自にシステムを開発する流れがオフコン時代から根強く続いている。そのためパッケージを中心として普及したグループウェアなどの情報系と比較すると、SaaS活用には向かないといわれることが多い。

 その一方で、ユーザーの期待は高い。図1は年商5億円以上〜500億円未満の中堅・中小企業に「今後SaaS形態での利用を検討したい業務システムは何か」を尋ねた結果だ。すべての業務システムの中で基幹系システムが最も高い値を示していることが分かる。

図1 図1●今後SaaS形態での利用を検討したい業務システム《クリックで拡大》

 この結果は基幹系システムの運用/保守コストが高いことと密接に関係している。冒頭で述べたように、基幹系システムは独自開発やカスタマイズの比率が高く、それだけ運用/保守のコスト負担が大きい。ユーザーはSaaSに移行すれば運用/保守の負担が軽減できると期待しているわけである。しかし、第1回「中堅・中小企業の安易なSaaS移行はトラブルを招く」でも取り上げたように、SaaSに移行すればコスト削減につながるとは限らない。このように基幹系システムにおけるSaaS活用ではユーザーが抱く期待と現実の間に大きな乖離(かいり)が生じている状態なのである。

システム特性における障壁は徐々に解消方向へ

 それでは本連載のキーポイントでもある「業務システム特性」を確認してみよう。

基幹系システムの業務システム特性別レベル
業務特性 レベル
初期導入コスト
自社運用負担度
カスタマイズ度
データ連携度
データ秘匿度
出典:ノークリサーチ(2009年)

初期導入コスト:

 基幹系システムは企業それぞれの業務スタイルに強く影響される。そのため、新規導入/リプレースのいずれの場合においても、要件定義には多くの手間と時間がかかることが多い。

自社運用負担度:

 現状維持の負担そのものは顧客管理系システムと同程度である。カスタマイズによってパッケージのバージョンアップコストや改変部分の保守/運用コストが増大するが、この点はカスタマイズ度の特性に反映させている。

カスタマイズ度:

 冒頭でも述べたように、基幹系システムではこの特性の影響が非常に大きく、SaaS活用においても障壁となってくるポイントである。

データ連携度およびデータ秘匿度:

 基幹系システムが扱うデータは財務情報など秘匿性の高いものが多く、販売/購買情報のようにCRM(顧客関係管理)SFA(営業支援)などの他業務システムとの連携が求められる場合も少なくない。データの秘匿性や連携性の確保は、これまでSaaSの苦手分野とされてきた。だが、昨今ではVPNを利用したデータ連携ソリューションや、シングルサインオンによって利便性とセキュリティを両立させたソリューションが登場している。前者の例としてはNTTソフトウェアの「SkyOnDemand」、後者としては日本ヒューレット・パッカードの「HP IceWall SSO」が挙げられる。

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