ERP NOW!【第5回】
「オープンソースERP」はユーザー企業に何をもたらすのか
オープンソースライセンスのERPパッケージが注目されています。どのような製品があり、ユーザー企業はどのようなメリットが得られるのか。選択の視点を考えてみました。
オープンソースライセンスで提供されるERPパッケージの選択肢が増えてきました。Linux、MySQLに代表されるオープンソースライセンスのOSやデータベース、ミドルウェアは企業の情報システムの中で既に大きな存在感を持っています。オープンソースERPも同様に企業で幅広く使われるようになるのでしょうか。
無料で利用可能
「サービス業」「電子機器メーカー」「専門商社」。オープンソースERPの「Compiere」の日本語ページには日本企業の導入事例が並びます。Compiereは米Compiere(2010年6月に米Consonaに買収された)が開発するERPで、1999年からソースコードが提供されています。世界での導入は1000件以上といいます。機能としては顧客管理、販売管理、仕入購買管理、在庫管理、財務会計、実績分析、プロジェクト管理を持ち、一般的な商用ERPと大きくは変わりません。
グローバル対応も行っていて、通貨や会計基準、言語、税率などの複数対応が可能です。また、サービス業と棚卸業を対象とした業種別テンプレートも用意します。
オープンソースERPが注目されるきっかけは従来の商用ERPに対するユーザーの不満です。最も大きな不満はコストが掛かること。商用ERPではユーザー数や導入サーバ数に応じてライセンスコストが掛かり、その他に保守・サポートのコストやカスタマイズコスト、アップグレードのコストなども考えなければなりません。企業にとっては無視できない額となっています。
Compiereはオープンソースライセンス(GPL2)と商用ライセンスのデュアルライセンスを採っています。オープンソースライセンスで提供する形態として「コミュニティエディション」と「スタンダードエディション」を用意。コミュニティエディションはCompiereの標準機能を無料で利用できます。利用ユーザー数の制限もありません。ただ、サポートやアップグレード機能は提供されないので注意が必要でしょう。もう1つのスタンダードエディションは有償で1ユーザー当たり年間4万8000円。標準機能に加えてPDFによる出力機能、電話や電子メールによるサポート、自動アップグレードなどが利用できます。最低契約ユーザー数は10です。
商用ライセンスの「プロフェッショナル」は1ユーザー当たり年間8万8000円で、スタンダードエディションの機能やサービスに加えて、CompiereのWeb版を利用することができます。企業にとっては無料のオープンソースライセンス版でCompiereを利用開始し、サポートやアップグレードが必要になったら商用版に移行するなどの選択肢があるのではないでしょうか。
Compiereと分岐して開発されている「Adempiere」というオープンソースのERPパッケージもあります。PostgreSQLに対応し、AjaxフレームワークによるWebベースのインタフェースを用意しています。
国産のオープンソースERPも登場
また、海外製のERPとしてはフランスのNexediが開発した「ERP5」も知られています。Linux、Python、Zope、MySQL、OpenLDAPなどが利用でき、ソフトウェア環境をほぼ無料で構築できるのが特徴です。欧州では中央銀行、病院、アパレル産業、自動車産業、航空宇宙産業、官公庁、地方自治体などが採用しているといいます。会計や在庫管理などの基本的なERPの機能の他に、CRMやSCM、人材管理などの機能を用意。アパレルや銀行などの特定業種に対応した機能もあります。
国内で開発されたオープンソースERPもあります。「HOOP」(Hiroshima Original Opensource Package)は、勤怠管理、給与管理、財務管理、業績管理、固定資産管理の基本機能があるERP。CentOS、PostgreSQLなどのオープンソースソフトウェア上で稼働します。KN情報システム、オープンテクノロジーズ、SRA西日本の3社が開発し、修正BSDライセンスで提供しています。
高まるユーザー企業の自由度
オープンソースERPの特徴はこれまで述べたような低コストでの導入・運用が挙げられますが、もう1つはユーザー企業がERPについて主導権を握れる点です。商用ERPではそのソースコードを見て、自社の業務に合わせて修正することは難しいですが、ソースコードが公開されているオープンソースERPでは可能です。ソースコードを修正し、自社向けのERPを開発できるのです。また、サポート期間に縛られることなく、ユーザー企業が自らの判断でERPを使い続けたり、アップグレードできます。商用ベンダーの製品ライフサイクルに合わせてIT投資を考える必要がありません。
ユーザー企業の判断できることが多い半面、ユーザー企業には高いスキルが求められます。ベンダーの支援を仰がないのであれば、ERP導入や保守、アップグレードも自社で行う必要があり、高いスキルを持つ人材が必須といえるでしょう。ただ、オープンソースERPはそれぞれ世界で活動する開発者やユーザーのコミュニティーを抱えていることが多く、ユーザー企業はそのコミュニティーから情報を得られます。商用ERPとオープンソースERPを比べると、機能では商用ERPがまだ先を行っているのは否定できません。しかし、ユーザー企業の自由度は抜群。ユーザー企業にとって、ERPの選択肢が多くなるのは長期的には良い結果をもたらすでしょう。
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