病院情報システム紹介:アルスコミュニケーションズ
オーダ操作を簡便化した医療情報システム「TRACLINICA」
検査・処方などのオーダを電子化して共有することで、病院業務の効率化や患者待ち時間の短縮を実現するオーダリングシステム。本稿ではオーダリングシステムを中核とした小規模病院向けシステム「TRACLINICA」を紹介する。
部門横断型の医療情報システムの代表格
現在、医療機関はさまざまな種類の情報システムを導入している。電子カルテシステムやレセプトコンピュータ(以下、レセコン)、医用管理画像システム(PACS)、看護支援システム、臨床検査システムなど実に多岐にわたる。それらのシステムは大きく「部門システム」と「部門間を結ぶシステム」の2つに分類できる。部門システムとは、検査部や放射線部、薬剤部など各部門の業務を支援するシステムを指す。部門間を結ぶシステムとは、複数部門が連携した情報管理を支援するシステムを指し、その代表格としてオーダリングシステムが挙げられる。
オーダリングシステムは、医師の診療内容に基づいた検査・処方などのオーダを電子化して関連部門と共有することで、伝達ミスの防止や入力・処方ミスのチェックを可能にする。その導入によって、院内業務の効率化や患者の待ち時間を短縮できるなどのメリットがある。診療内容の電子化という点で電子カルテと重複する機能を持つが、所見やシェーマなどオーダ以外の情報を入力する電子カルテと比べて入力に掛かる手間が少ない。そのため、オーダリングシステムの導入は「医師の診療業務におけるIT化の最初のステップ」ともいえる。
オーダリングシステムを核とする医療情報連携
小規模病院向け医療情報システム「TRACLINICA」はオーダ情報を管理するデータベースを中心に、診察室や検査室、薬局、看護室、事務などの周辺システムが連携するネットワークを構築して情報の共有化を図るクライアント/サーバ型システム。主に診療所から小規模病院(病床数200床以下)に対応する。アルスコミュニケーションズ 代表取締役 矢野利一氏が前職の三洋電機在籍時に開発したシステムがベースとなり、2002年から同社が開発・販売を引き継いでいる。
| システム機能 | |
|---|---|
| オーダリングシステム | 処方オーダ、注射オーダ、検査オーダ、X線オーダ、看護介助システム、予約システム、ベッド管理システム |
| 周辺システム | 受付システム、薬局システム、検査システム、X線実施システム、印刷管理システム、医事接続システム |
| オプション | 給食オーダ/実施システム、病棟支援システム、RIS連携システム、周辺接続システム |
| 基幹システム | データベースシステム、周辺管理、バックアップ (オプション) 監視システム、リモート接続、電源管理、VPN通信、院内インターネット、セキュリティ管理 |
矢野氏は「医療機関が取り扱う情報の発生源は、医師の診療業務。まず、その部分をIT化することで検査部門や薬局部門などの関連業務を円滑にし、医療機関全体の運用を効率化できる」と説明する。
また、小規模な病院におけるIT化の課題として、IT化の費用対効果が得られにくいことを挙げている。さらに、古い検査機器を使用している場合、機器間の情報連携が進まない点などを指摘し、電子カルテを導入してもその入力に手間が掛かることも課題だという。その上で、TRACLINICAはそうした課題を解決して病院のIT化を促進するシステムと説明する。
TRACLINICAの特徴について、矢野氏は「アクティブ方式によるオーダ入力作業の簡便化」「周辺システムとの連携が容易」「業務改善につながるカスタマイズが可能」の3点を挙げている。
アクティブ方式によるオーダ操作の簡素化
TRACLINICAのオーダ入力について、矢野氏は「業務に必要不可欠な機能に絞り、より早く入力し、分かりやすく表示するという部分にこだわった」と説明する。オーダ入力画面では同社が独自開発したアクティブ方式を採用し、入力の簡便化や操作性の向上を図っている。「外来診療において患者が入れ替わる間に入力が完了できるような操作性を目指している」という。
アクティブ方式では、オーダデータを診療日(時間軸)と処方内容(内容軸)の2つの軸で管理する。また、「いつ・どの薬剤を・何日分・どこで・誰が」処方したかをアクティブ処方番号で管理し、投薬内容の変化と他科の診療状況を一覧表示する。
これにより患者個別の略歴の全体像を把握でき、アクティブ処方番号を選択するだけで過去の処方オーダ内容を繰り返し入力することが可能になり、操作が簡便化されるという。
また、診療内容の所見などの情報は紙カルテと同様、画面に手書き入力が可能。さらに、入力支援ツールを利用して事前登録したパターン入力も実施できる他、職能別アクセス権限によって利用画面の制限設定を行える。
周辺システムとの接続をサポート
矢野氏は「機器をリプレースした場合、購入費と運用に掛かるコストが発生する。既存システムを利用することで病院の投資を無駄にすることなく、利便性の高いシステムを運用できる」と説明する。例えば、TRACLINICAが画像システムと連携した場合、診察室ではオーダ画面と画像ビュワーの2画面で表示。画像を診断しながらオーダ入力操作やデータの閲覧などが他の検査結果の参照などが可能だ。
BPRに基づいたカスタマイズも可能
さらにTRACLINICAは、院内の業務分析からその改善策の策定などの「BPR(Business Process Reengineering)」を見据え、柔軟にシステムを拡張できるように設計されている。例えば、導入病院から「独自にアプリケーションの追加や変更を実施したい」という要望があった場合には、条件付きではあるが該当アプリケーションのソースコード(Visual Basic 6.0)を提供している。また導入に当たってはシステム仕様を策定した後にプロトタイプシステムを構築し、2、3カ月の試用運用を実施。そのフィードバックを経てシステムを改良した上で本稼働を開始する。
矢野氏は、診療情報の電子化には「ペーパーレス」と「診療記録の入力作業の軽減」の2つの目的があると説明する(関連記事:効率的な紙カルテのデジタル化がペーパーレスを成功に導く)。しかし、ただ電子化するだけではなかなか効果は得られない。例えば、システムが停止したり、データを消失してしまうとその時点で診療業務が止まってしまう可能性がある。そのため、障害時の対策に備え、迅速にデータバックアップやシステムの復旧を可能にする体制を構築する必要があるという(関連記事:復興後の医療ITはリモートバックアップが鍵に)。
TRACLINICAではVPN経由の遠隔監視・保守サービスを利用でき、故障頻度が高い機器については冗長化を行うことで、システムを停止することなく故障部品の入れ替えなどが可能だ。
アルスコミュニケーションズは外来専用の廉価版「TRACLINICA 小規模外来専用安価システム」、TRACLINICAに電子カルテ機能を追加して仏メダシスのDICOM画像システム「DxMM-SRV」と連携する「TRACLINICA V2」なども提供している。TRACLINICAの今後の製品展開について、矢野氏は「レセコン機能の取り込みなどの機能強化・拡張を進め、病院と診療所のシームレスな連携基盤の実現を目指す」としている。
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