【製品動向】デスクトップ仮想化を見据え、高性能化するミッドレンジ向けストレージ階層化やデータ配置の自動化などの機能を搭載

最近、導入コストを抑えながら、ハイエンド向け機能を継承するミッドレンジ向けストレージ製品が市場に提供され始めた。最新動向をまとめた。

2012年11月13日 08時00分 公開
[翁長 潤,TechTargetジャパン]

 米調査会社IDCが2012年9月に発表した、『2012年4~6月期の世界ディスク・ストレージ市場』によると、ディスクストレージシステム全体の売り上げは前年同期比で8.0パーセントの伸びとなった。特に、ミッドレンジ向けストレージが最も急速に成長していると分析する。最近、主要なストレージベンダー各社が同クラスのストレージ新製品を相次いで発表している(関連連載:SMB向けストレージ製品紹介)。本稿では、ミッドレンジ向けストレージの最新動向を示す。

 高い処理性能や拡張性を実現するため高価なハードウェアを搭載するハイエンド向けストレージと比べ、ミッドレンジ向けストレージはある程度拡張性を限定し、高いコストパフォーマンスが得られるアーキテクチャ設計が多かった。しかし、最近では導入コストを抑えながら、これまでハイエンド向けに提供してデータ圧縮や階層化、重複排除などの機能を搭載する製品を提供し始めている。

デスクトップ仮想化にも最適なストレージが求められる

 ミッドレンジ向けストレージ製品が高性能化する要因の1つに「デスクトップ仮想化の導入」が進んでいることが考えられる。デスクトップ仮想化は、クライアント端末の管理運用の効率化やセキュリティ対策、従業員のワークライフバランス、事業継続性などにメリットがある。これまでは大企業での導入が中心だったが、最近では中堅・中小企業にも浸透しつつある。特にサーバ仮想化が本格的な普及段階に入り、導入企業が仮想化のメリットを実感した上でデスクトップ仮想化を検討しているようだ。

ストレージがネックとなりやすいデスクトップ仮想化環境

 しかし、デスクトップ仮想化におけるストレージの課題が幾つかある。まず「ストレージの処理性能の問題」だ。その代表的な例が、多数のユーザーが同時にログインすると大幅な速度低下が起こる「ブートストーム」だ。午前8時から9時の時間帯に従業員の出社が集中し、クライアントを一斉に起動ことで発生する。大量のストレージI/Oが集中的に発生し、ストレージサブシステムの処理が追い付かなくなるのだ。

 次に「ストレージ環境の構築コストと作業負荷」が考えられる。ユーザー分の仮想デスクトップのイメージを格納するために、より多くのストレージ容量が必要となる。また、規模が大きくなるほど、デスクトップイメージ構築のために管理者の作業時間や負荷が掛かる。

 そうしたデスクトップ仮想化におけるストレージの課題を解決する方法には、SSD(ソリッドステートドライブ)を利用した「ストレージの階層化」や「データの重複排除」などがあり、ミッドレンジ向けストレージにもそれらの機能が搭載されるようになった。

デスクトップ仮想化に最適なストレージ ネットアップ

 ネットアップは11月、ミッドレンジ向け製品群「FAS3200」シリーズの新機種「FAS3220」「FAS3250」を発表した。FAS3200シリーズは、データ重複排除やクローン機能「FlexClone」、フラッシュ技術に対応するのが特徴だ。FAS3220は従来機種(FAS3210)と比べて、システムメモリを3倍(8Gバイトから24Gバイト)、プロセッサコア数を2倍に拡張し、最大80%の性能向上を実現している。また、ストレージ容量は最大で2.16ペタ(P)バイト。同社は「デスクトップ仮想化に最適なストレージ」と位置付け、その最小販売価格を382万円(税別)とし、従来機種の795万円(同)と比べて値下げして提供している。

ミッドレンジ向け最上位機種を販売 NEC

 NECは11月、SAN(Storge Area Network)対応のミッドレンジ向けストレージ「iStorage Mシリーズ」の最上位機種「iStorage M700」を提供開始した。従来と比べてCPU数を2倍、内部バス帯域を4倍に強化した。また、複数のI/O命令をまとめて高速に処理する同社独自のRAIDアクセラレータ技術を搭載し、ストレージ内部処理を多重化する。これらにより、従来比で約3倍の性能を実現するという。ストレージ容量は従来比で2.5倍となる最大2.2P(ペタ)バイトまで拡張可能。

 加えて、データの特性やアクセス頻度に応じて自動的に最適な記憶領域にデータをブロック単位で移動させる「データ最適配置機能」を提供(オプション)。自動的にストレージの最適化が行われることで、ストレージの性能設計が難しい場合でも事前設計や稼働後の性能チューニングに手間を掛けることなく、運用効率の向上に貢献できるとしている。iStorage M700の販売価格は、1765万円から。

5秒単位でデータを自動階層化 ドットヒル

 Sun Microsystems(現Oracle)やHewlett-Packard(HP)などに製品をOEM供給してきたドットヒルシステムズは11月、ミッドレンジ向けSAN(Storage Area Network)ストレージの新製品群「Pro 5000シリーズ」を発表した。

 Pro 5000シリーズは、NL-SAS、SAS、SSDなど異なる種類のドライブが混在可能。SSDをキャッシュとして活用したり、2または3階層のストレ―ジを構成できる。さらにデータの高速アクセスやリアルタイムでの自動階層化、ストレージの仮想化などを実現するソフトウェア群「RealStor」を搭載した。RealStorの自律型階層化機能「RealTier」ではデータアクセスを5秒単位で監視し、アクセス頻度の高いデータを特定。4Mバイトのページ単位で最適な階層に自動配置する。Pro 5000シリーズの参考価格は、1265万1000円から。

仮想化機能を多く搭載 日立製作所

 日立製作所はミッドレンジ向けユニファイドストレージ「Hitachi Unified Storage 100 シリーズ」を提供している。HUS100シリーズは、同社のミッドレンジディスクアレイ「Hitachi Adaptable Modular Storage 2000シリーズ」の後継機種として位置付けられている。ブロック/ファイル両方のアクセスプロトコルに対応し、データ種類が異なるアプリケーションからのアクセスを単一システムに集約して管理する。その最大ストレージ容量は2.8Pバイト(HUS150の場合)。

 また、ボリューム容量仮想化機能「Hitachi Dynamic Provisioning」やストレージ階層仮想化機能「Hitachi Dynamic Tiering」などでストレージ容量の効率的な利用を支援する。同社によると、AMS2000シリーズと比較した場合、最大ストレージ容量が2倍、データ転送性能が3倍まで向上したという。HUS100シリーズの販売価格は、157万5000円から。

 その他にも、EMCはミッドレンジ向けストレージ「VNXシリーズ」の新機能として、ストレージプール機能を強化。例えば、フラッシュにはRAID 5を、NL-SASにはRAID 6といったように、複数のRAIDタイプを柔軟に組み合わせることができる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

空冷だけではなぜ不十分? データセンターの熱負荷対策をどうする

CPUやGPUの性能向上に伴い、データセンターでは今、発熱量の増加にどう対応するかが課題となっている。特に高密度なサーバ環境では、従来のファンやヒートシンクに頼るだけでは熱管理が難しい。こうした中、企業が採用すべき手段とは?

製品資料 Dropbox Japan株式会社

ファイルサーバをアウトソーシング、「クラウドストレージサービス」の実力

中堅・中小企業の中には、IT担当者が社内に1~3人しかいないという企業も少なくない。そのような状況でも幅広い業務に対応しなければならないIT担当者の負担を減らす上では、ファイルサーバをアウトソーシングすることも有効だ。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...