AWSに勝負を挑むVMware、新クラウドサービス「vCloud Hybrid Service」の勝算はPaaS「Cloud Foundry」も提供

Amazon Web Serviceに対抗する新しいクラウドサービスが、VMwareによって2013年後半にもリリースされる見通しだ。新サービスではvCloudインフラがプラットフォームとして採用される。

2013年04月25日 08時00分 公開
[Beth Pariseau,TechTarget]

 米Amazon Web Servicesのクラウドサービス「Amazon Web Services」(AWS)に対抗する新サービスを米VMwareが2013年後半にもリリースすることが正式発表された(米国時間2013年3月13日)。新サービスではvCloudインフラがプラットフォームとして採用される。

 正式発表以前に新サービスのニュースが報じられたが、VMwareはこの報道について沈黙を守っていた。

 VMwareと親会社の米EMCが3月13日にニューヨークで開催した投資家向けのイベント、Strategic Forumにおける経営陣のプレゼンテーションでは、この新サービス「VMware vCloud Hybrid Service」の技術的な詳細情報は乏しかった。このサービスのプロビジョニング方法や料金の他、大まかに2013年半ばとされている提供開始の具体的な予定日も、VMwareのパット・ゲルシンガーCEOとカール・エッシェンバック社長兼COOの公式発言では触れられていなかった。

 vCloud Hybrid Serviceは現在、β段階にあり、匿名希望のあるβテスターは、このサービスはまだ粗削りだと評した。このテスターは、(1)クラウド環境へのアップロードとダウンロードの失敗やタイムアウト、(2)トラブルシューティングのためのインフラの可視性が乏しいことによるサイト間統合の問題、(3)同じ仮想データセンター内のマシン間における仮想マシン(VM)接続の問題――を報告している。

 公正を期すために言えば、製品のβ版は一般的にバグが多い。また、VMwareの新サービスのβ版では、近いうちに新しいインタフェースが提供されることになっている。このテスターは、それまで評価は差し控えるとしている。

 VMwareの担当者は取材に対し、顧客満足は重要であり、当社はどのβプログラムでもそうだが、顧客のフィードバックを生かし、「可能な限り最高の製品を市場に届けることを目指している」と述べた。

AWSからの顧客獲得を狙うVMware

 将来的にvCloud Hybrid Serviceを試すかどうかについて、βテストに参加していないVMware製品のユーザー企業の意向は割れている。

 「これまでと同じインフラを社内に持ち、長々と時間がかかるプロバイダーとの契約プロセスを経ることなく、ボタンをクリックして社内インフラをクラウドに拡張できることは、VMwareの新サービスの大きなメリットだ」と、イスラエルのあるハイテク企業の仮想化管理者、マイシュ・サイデルキーシング氏は語った。

 同氏の勤務先は通常、バージョン1.0の製品は導入しないが、同氏は、いずれは試すことになるだろうとの見通しを示した。

 VMwareは、AWSの既存顧客に乗り換えを説得するのには苦労するかもしれない。

 「クラウドに求められるのは、インフラの提供だけではない」と、米Robert Half Internationalのショーン・ペリーCTOは語った。「新しいものを作るためのプラットフォームを提供することが求められている」

 Robert Halfは社内でVMware vSphereを使っているが、パブリッククラウドとしてはAWSを強く支持している。vCloudパートナーの米Verizon-Terremarkを以前利用したこともあるが、そのサービスは、AWSを使って行ってきたクラウドコンピューティングの取り組みの方向とずれていた、とペリー氏は述べた。

 業界専門家は、VMwareのパブリッククラウドサービスがどの程度成功するかは不明としている。だが、ある点では意見が一致している。それは、VMwareにとってパブリッククラウドサービスは必然だったということだ。

 「VMwareの新サービスは関心を呼ぶだろう。VMwareのサービスだからだ。しかし、現在の市場で新サービスを立ち上げるには時間がかかるし、ライバル、すなわちAWSは、前に進むことをやめないため、追い付くのは容易なことではない」と米Gartnerのアナリスト、カイル・ヒルゲンドーフ氏は指摘した。

 それでも、パブリッククラウドを導入するには、多くの企業は文化を変える必要がある。VMwareにとっては、vCloud Directorでパブリッククラウドとプライベートクラウドの両方を構築する適切な方法を示すチャンスだと米Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・スターテン氏は述べている。

次にすべきこと:パートナーの理解を得る

 vCloud Hybrid Serviceは、チャネルパートナーを通じて提供され、VMwareサービスプロバイダープログラム(VSPP)は継続される。

 VSPPパートナーは、VMwareが2012年にvCloudサービスを提供するために作成したリファレンスアーキテクチャとオペレーションランブックにアクセスできる。

 VMwareのエッシェンバック氏は、VSPPは成功しているプログラムだと言う。

 「VMwareの新サービス投入により、パートナーとの関係に影響が出そうだ」とスターテン氏は予想した。「大きな影響にはならないと思うが、vCloudサービスの立ち上げを考えていた企業では、その取り組みが遅れるかもしれない」

 なお、Strategic ForumでEMCとVMwareの経営陣は、2013年4月1日(米国時間)付けでのPivotal Initiativeの正式な業務開始も発表した。このスピンオフ企業(旧称:Pivotal)は、EMCのGreenplumおよびPivotal LabsのIP(知的財産)と、VMwareのvFabric、Cloud Foundry、Cetasといった資産を組み合わせて事業を行う。VMwareの元CEOのポール・マリッツ氏が指揮を執る。

 VMwareが開発したPaaS(Platform as a Service)ソフトウェアであるCloud Foundryは、新しいvCloud Hybrid Serviceで提供が開始される。

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