「スタートボタン」の廃止をはじめ、既存バージョンから大幅に変わったUIに戸惑う声も大きかったWindows 8。ユーザーの声を反映したWindows 8.1を市場はどう評価するのだろうか。
米Microsoftは2013年5月末、Windows 8.1、コードネーム「Windows Blue」のプレビューサイトを公開し、バージョンアップサイクル短期化計画の実行を開始した。しかしWindowsについて、今後はあまり間を置かずにアップデートを実施するというMicrosoftの施策は、世の中の情勢に遅れまいとする企業のIT部門に、好ましくない影響を及ぼすおそれがある。
コンサルティング会社、米Directions on Microsoftのアナリスト、マイケル・チェリー氏は、「Windows 8のアップデートが現在発表されている通りのペースで実施されるとすれば、組織のIT部門は逐一アップデートを適用するか、あるいはアップデートを何度か見送るか、選択しなければならない」と話す。
この点について、印刷サービスの米Innovative Print and Media Groupでテクノロジー部門を率いるロバート・ケーチグ氏は、「どちらを選択しても、アップデートの適用を早めることはIT部門のスタッフの負担が増すことになる。よく考えて方針を決めなければならない」とコメントする。
ちなみに、ケーチグ氏の会社では通常、最新のテクノロジーは適用しないという。「最新の先進的なテクノロジーを採用することで、運用中の実務で新たなリスクを抱えることを避けたいからだ」。ただし、仮にIT部門が「OSの更新サイクル短縮に追随せず、アップデートを見送る」と決断した場合、技術上のギャップを抱えることになりかねない。
「そうなれば、IT部門の管理者は全員そのギャップを意識しながら業務を進めざるを得なくなる。次期バージョンのリリースが早まれば、最新のOSと自社システムとのギャップはどんどん広がる」(同氏)
一方で、Windows 8.1の更新スケジュールが前倒しになるのは、歓迎できる部分もある。「製品が改良されることで、ユーザーの不満は軽減されるだろうし、組織のIT部門ではシステムのセキュリティレベルを高められる」と語るのは、バイオテクノロジーおよび医療専門の広告会社、米Dudnykの副社長でIT部門の責任者でもあるブレット・アンダー氏だ。
「この変化には素早く対応する必要がある。プログラムのリリースとアップデートの適用は非常に重要だ。アップデート用ファイルの質に問題がある場合は別として、リリースの時期が早まることで、システムへの展開をより短期間で終えることが求められるようになる」(アンダー氏)
だが、米IDCのアナリスト、ボブ・オドネル氏は、「MicrosoftはWindows 8.1を2013年後半にリリースする準備をしているというのに、大企業の中にはこれからようやくWindows 8にアップグレードしようかというところが何社もある。Windows 8の導入を既に終えた組織は多いとはいえないが、Windows 8を既に導入した組織は、より進歩的で、新しいテクノロジーを採用するペースも速い。ただし、ハイペースのシステム更新を長期間継続するとすれば、IT部門にとっては大きな課題となる」と話す。
Windows 8.1へのアップデートによって、変わった点を少し整理してみよう。まずWindowsロゴの形をした「Start Tip」をクリックすると、スタート画面を表示させることができる。色の選択肢が増えているなど、パーソナライズ機能もある。さらに、タイルのグループ化など、画面レイアウトの調整もより簡単になっている。
インターネットやクラウドとの連携については「Internet Explorer 11」が搭載された。検索エンジンの「Bing」では、Webだけではなく、ローカルのファイル、アプリおよびSkyDriveの内容を検索対象に含める「グローバル検索」に対応する。SkyDriveに文書を直接保存することもできるようになる。
だが、Microsoftは、多くのユーザーが望んでいたものを復活させなかった。それは「スタート」メニューを表示させる、昔からのユーザーにはなじみ深い「スタート」ボタンである。旧バージョンのWindowsデスクトップのルック&フィールに愛着がある個人ユーザーと大企業の顧客は少なくはない。なのに、この機能を搭載しなかったことで、新しいOSに対する不満はなおも残るだろう。ただし、Start Tipをクリックしたときの表示は、タイル画面だけでなくアプリビューを直接表示するように設定することもできる。
長年のWindowsユーザーの多くが、まだWindows 8の新しいルック&フィールを受け入れていないという認識がありながら、スタートボタンを完全復活させる案を却下して、この程度の機能変更にとどめたところに「Windows 8に早く慣れてほしい」というMicrosoftの戦略が垣間見える。
Microsoftのブログ上でも、OSに対する感想のコメントでは好意的なものと否定的なものが入り混じっている。ユーザーの間でも賛否両論があるようだ。ユーザーらはブログにこう書き込んでいる。
「簡単な解決法がある。スタートボタンとスタートメニューの組み合わせ、またはスタート画面のどちらを表示させるかをユーザーが選べるようにすればいい。Windows 8の最初のリリース時にこの選択肢を表示していたら、Windows 8はもっと売れていただろうし、現状ほど酷評されることもなかっただろう」
「スタート画面を表示させる“ホットボタン”を画面の左下隅に増やした程度では物足りない。リモートデスクトップと仮想マシンを利用している私のようなユーザーなら、スタートボタンの復活を切実に願っているはずだ。ウィンドウの隅をクリックするのは苦行だ」
一方で、新しいルック&フィールへの変更に好意的な反応を示したユーザーもいる。特に、画面上でアプリのインスタンスを複数表示し、その表示サイズを任意の大きさに変更できる「スナップ表示」は好評だ。Windows8.1の反響とともに、今後のMicrosoftのアップデート短期化計画に注目していく必要がある。
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