米国で米Amazonに次ぐeコマースサイトを運営するオフィス用品小売り大手の米Staplesがモバイル向けコマースサイトの再構築に乗り出した。開発に込められた狙いとは。
オフィス用品小売り大手の米Staplesは、増え続ける顧客からの要望に対応するため、この1年でモバイル小売りサイトを徹底的に整備した。
これは、近年、モバイルeコマース市場に参加するために、多くの企業が対応を迫られている動きだ。
Staplesの技術開発センター、Velocity Labのディレクターであるプラット・ヴェマナ氏は、「1年前、モバイルはクールでトレンドの最先端だったが、より短期間でアジャイルなビジネス戦略の導入が必要なeコマースの特定領域では、もっと多くのことが起きている」と語る。
Velocity Labは、Staplesの本社とは別に、企業間取引(B2B)市場および企業消費者間取引(B2C)市場向けに新しい革新的なデジタルeコマース戦略とテクノロジーを開発するために設けられた。
ヴェマナ氏によると、Velocity Labを開設する際に、Staplesは社内の優れたチームと協力して、マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学など地元の大学の才能ある研究者との関係を作り、既に公開されている商用および学術的な研究を利用することに注力したという。
Staplesではモバイルeコマース戦略を強化するという目標の下、簡素なStaplesのモバイルWebサイトを見直して対策に乗り出した。Webサイトを作り直してモバイル戦略の充実を図ったのだ。
「モバイル端末は問題解消の道具であることを踏まえ、モバイルを使ってどうすればユーザーに多大な価値をもたらすことができるのかを理解する必要があった」と、ヴェマナ氏は振り返る。
「一歩下がって、顧客の声を拾い上げることにした。“モバイルでどのような活動をするか”や“モバイルによって解消される問題は何か”といった質問をした」とヴェマナ氏は語る。顧客調査で吸い上げた情報と教訓は、B2C戦略だけでなく、B2B市場向けの取り組みにも応用できるかもしれない。
顧客調査は、Staplesが新しい革新的な開発を会社に取り入れる上で、非常に重要な役割を果たした。
「当社では、顧客調査の情報を参考に、ロードマップを描き直した」と、eコマース担当取締役副社長のファイサル・マスード氏は語る。
Staplesでは、新しいモバイルeコマースWebサイトとアプリケーションを開発する過程で、それが簡単な仕事ではないことを学んだ。
Staplesのユーザビリティ担当ディレクターのキム・ラヌー氏によると、「モバイル向けのWebサイトを再設計するに当たり、まず、モバイル市場でよい業績を上げている競合他社や、異業種の企業を調べた」という。
このプロセスには30〜35人が携わった。Staplesでは、チャネル横断型のチームを編成し、オンラインマーケティング部門とリテールマーケティング部門、さらには製品開発グループと業務グループのそれぞれの関係者が含まれるようにした。
モバイル製品マネジャーのベス・ベイリガー氏によると、Staplesでは、さらに、製品開発の重点事項に優先順位を付けたという。
その結果、StaplesのモバイルWebサイトを再設計し、今よりもモバイル向きでモジュラー設計に対応する必要があることが分かった。新しいモバイルWebサイトは、前のWebサイトよりも格段に見やすく、シンプルで、操作しやすいインタフェースに生まれ変わった。
Staplesは、この新しいモバイルWebサイトを最近公開した。同社のモバイルアーキテクト、グスタヴォ・ポスピシェル氏は、「このサイトはモジュラー開発アーキテクチャに対応し、モバイルでさらに操作しやすくなり、それぞれのページを独立させることができた」と話す。開発には、オープンソースコンポーネントや各種フレームワークを含め、さまざまなツールが使用された。
ポスピシェル氏は、「1つのツールで多くの機能を開発する手法は取らなかった。基本的な開発は全て社内で行い、それをモバイルプラットフォームの開発に拡張した」と説明する。また、Staplesの開発者は、Webサイトをさまざまなモバイル画面に合わせて作り、多種多様な端末で問題なく表示できるようにしているという。
Staplesのモバイルeコマースは、間もなくテスト段階に入る。企業ユーザーは、2013年8月末には新しいeコマースプラットフォームを使用できる。2013年8月半ばにモバイルWebサイトが公開された時点で、コンシューマーユーザーには新プラットフォームが提供されている。
Staplesでは、B2Bパブリックプラットフォームのパイロット運用も実施中で、企業向けの新しいeコマースWebサイトを近くリリースする予定だ。
企業ユーザーはコンシューマーと比べるとユーザー間の違いが明確なため、新しいWebサイトでは、ユーザーを識別し、各ユーザーの購入内容を把握する必要があると、ヴェマナ氏は言う。
「注文、フロー、再注文を管理する。基盤の(サイト)設計は共通だが、Webサイトに表示される内容とナビゲーションは、企業向けWebサイトの場合、ユーザーによって大きく変えている」(ヴェマナ氏)
Staplesでは、オフラインおよびオンラインのビッグデータウェアハウスを使って、顧客向けにページをパーソナライズする予定だ。これで、競合他社よりも優位に立つことができるだろう。マスード副社長の話では、価格設定、パーソナライズなどを処理するサービスや他の姉妹サイトの構築も検討しているそうだ。
また、新しいテクノロジーを使って顧客エクスペリエンスを向上することで、優位性を維持する必要もある。
「タブレットを店舗に導入した際に、タブレットの安全を保護し、アプリを配布にするにはどうしたらよいかと、MDM(モバイルデバイス管理)を使っていろいろと実験をした」とヴェマナ氏は言う。Staplesでは、B2B市場の企業ユーザーの協力の下、アプリケーションの操作性をテストし、ユーザー用のコンテナアプリを構築するなど、問題を解決しなければならなかったという。
2012年、Staplesは、オンラインで100億ドル超の売り上げを達成し、米Amazonに次いで大きなインターネット小売り業者になった。デジタルおよびモバイルeコマースへのStaplesの投資が功を奏するかどうか、今後の動向を見守りたい。
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