IT技術や製品・サービスの急速な進化は、従業員の生産性改善と業務コストの削減に貢献する。それを下支えするシステム担当者が今、脚光を浴びつつある。彼らの生態に迫ってみよう。
データセンターを支える全てのサーバとシステムを管理・維持するには、高度に訓練されたスタッフが必要だ。だがシステム管理には鋭い技術知識と連係に対する洞察力だけでは不十分だ。
米TechTargetは先ごろ、ITプロフェッショナル約400人を対象として、サーバ管理者の関心事や職業的特徴、待遇、労働環境などに関する調査を実施した。その結果を以下に示す。
調査に回答したITプロフェッショナルのうち237人が「サーバやシステムの管理に大半の時間を費やしている」と答えた。2014年の課題として「WANまたはLANのネットワーク問題に取り組む」と回答した人は39%、「今後もサーバ管理に集中する」という回答は36%、「社内の仮想化プロジェクトに取り組む」という回答は33%だった。
ホステッドサービスプロバイダーの米VirtualQubeのスコット・ゴースター最高経営責任者(CEO)は「仮想化技術はハードウェアとソフトウェアの両面で急速に進歩しており、従業員の生産性を高める一方で総合コストを削減する高度なソリューションをIT部門は提供できるようになった。これはITプロフェッショナルにとって大きなチャンスだ」と指摘する。
回答者の約58%は、2014年に期待される重要なIT価値として「サーバ仮想化ツールとシステム自動化ツールによる業務効率の改善」を挙げた。また、「デスクトップとアプリケーションの仮想化などの技術を活用して従業員の生産性を改善するための取り組みを進める」と答えた人は53%だった。これらの技術は、端末サポート業務を軽減するとともに、従業員がどんな場所でも仕事ができる環境を提供できる可能性がある。
また、IT部門の役割はコンピューティングサービスを提供することであるため、39%のITエキスパートたちは、ユーザーへのサービス提供形態を改善し、エンドユーザーエクスペリエンスの向上を目指す考えだ。
ITサービスを専門とする米InfoCuresのIT管理者、ロン・ザウォラ氏は「当社の場合、2014年の最大のITプロジェクトは、従業員の活動範囲を拡大することだ。すなわち、優れた技術とサービスを提供することで従業員のIT負担を軽減する。モバイルに対応しつつ、より強力な機能を提供するつもりだ」と話す。
「IT分野での経験年数が11〜20年」と答えたのは回答者の約49%だった。「21〜30年」と答えた人は17%、「6〜10年」は16%、「6年未満」は10%、「30年以上」は8%だった。サーバまたはシステムの管理業務の経験に限定すれば、「経験年数が1〜5年」が44%、「6〜10年」が24%、「11〜20年」が17%、「1年程度」が14%だった。
サーバ/システム管理の経験が「30年以上」と答えたのは約1%にすぎなかった。これは通常のキャリアアップに伴う結果と思われる。すなわち、サーバ管理担当者がより高度なIT業務に移行したということだ。サーバ管理業務の経験が1年未満のITスタッフの大半は、キャリアアップに向けた新たな挑戦として現在のポジションに就いたようだ。
回答者の平均年収(給与、歩合、ボーナスの合計)は8万3162ドルだった。また回答者の52%が2014年に昇給を見込んでおり、ボーナスを期待している人は16%だった。「2014年の年収は変わらない見込み」という回答は27%。「給与や手当てが削減される見込み」と答えた人はわずか1%だった。
多くの場合、報酬は従業員の価値とリンクしているため、ITプロフェッショナルたちは、あらゆる機会を利用して最新の技術に接するなどして専門技能の開発に取り組んでいる。
大手金融会社のインフラ担当ディレクターは「PeopleTek Leadership Journey(リーダー養成コース)とCISSP(公認情報システムセキュリティプロフェッショナル)の両方のクラスに参加するつもりだ」と話している。
また、サーバ/システム管理プロフェッショナルの少なくとも33%がITを取り巻く雰囲気を悲観的に見ており、大半の回答者が「キャリアアップの機会が限られている」「経営陣が効果的に機能していない」「サーバ/システム管理業務のトレーニングの機会がない」などの不満を挙げた。一方、ITをめぐる状況を楽観視しているのはわずか23%で、「業務の拡大」「イノベーションが重視されている」「経営陣に満足」などを理由に挙げている。「楽観、悲観のどちらでもなく、ITの課題に日々取り組んでいる」と答えたのは回答者の44%だった。
ITプロフェッショナルにとっての“成功”の基準はさまざまだが、注目すべきポイントは幾つかある。サーバ/システム管理者の場合、「システム障害復元力の改善と潜在的ダウンタイムの削減によってITサービスの信頼性を確保することが仕事の成功の基準」と考えている人が70%だった。
「生産性向上の目標を達成することが重要」と答えたサーバ管理者は43%で、「ITプロジェクトをスケジュール通り達成することが重要」と答えたのは42%だった。一方、サービスを提供することよりも「業務部門の目標達成に貢献したい」と答えたサーバ管理者は32%だった。ハードウェアとソフトウェアの両面での仮想化技術の急速な進歩は、従業員の生産性改善と業務コストの削減に貢献する大きなチャンスをITプロフェッショナルに与えているようだ。
前出InfoCureのザウォラ氏は、従業員の業務実績を評価するのに標準化された業務評定システムを使用することに批判的であり、「経営陣との日常的なコミュニケーションの方が大切だ」と強調する。
「私が自分自身の評価の基準にしているのは、同僚からのフィードバック、自分の業務範囲外の問題解決への貢献、そして経営陣が私を必要としているかどうかだ」とザウォラ氏は語る。
ITプロフェッショナルは遅かれ早かれ、社内(あるいは社外)で別の業務に就く決断をしなければならない。サーバ管理者の約29%がIT部門での昇進を狙っているのに対し、部署にこだわらない昇進を狙っているのは13%にすぎなかった。また「現在の業務にとどまるつもり」と答えたのは17%、「より大きな企業への転職を狙っている」という回答は18%だった。
「私は組織に貢献したいという気持ちを強く持っているが、自分の仕事を他の人に任せた方がよいという時期が来れば、いつまでも給料にしがみついているつもりはない」とザウォラ氏は話す。
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