ガイ・カワサキ氏が語るブランド構築術
伝説の元Appleエバンジェリストが指南 人を夢中にさせる3つのヒント
米Appleのように人々を魅了する製品を開発するにはどうすればいいのだろうか。ブランドの確立は決して容易ではない。伝説の元Appleエバンジェリスト、ガイ・カワサキ氏が、顧客を夢中にさせる3つのヒントを指南する。
「優れている」から「素晴らしい」へ、そして「人を魅了する技術」へ――有名な理論家やビジネス界の指導者たちは長い間、競争から抜け出し、持続的なブランドを確立する方法を企業の経営者たちに指南してきた。
2014年4月初めに米フロリダ州オーランドで開催されたカンファレンス「AIIM Conference」でも、同じような状況が見られた。米Appleの元チーフエバンジェリストであるガイ・カワサキ氏は、自身のベストセラー本(原題:『Enchantment: The Art of Changing Hearts, Minds, and Actions』、邦題:『人を魅了する 一流の職業人であるための技術』)をベースとした「The Art of Enchantment(人を魅了する技術)」というタイトルのセッションで、顧客を魅了してその行動を変えることができる企業を支える「3本の柱」について述べた。
「技術を製品化する上で鍵となるのは、専門知識とか流行の技術といったことではない」と同氏は語った。「最も重要なのは人々を魅了することだ。人々の心と考えと行動を変えることなのだ」
カワサキ氏は「人を魅了する技術」「顧客の心をつかむもの」「それらを製品開発および顧客との関係の中でどう具体化するか」について詳しく説明した。同氏はユーモアや個人的なエピソードも交えながら、顧客の信頼とロイヤルティーを獲得する優れたブランドに共通する条件について語った。
だが、顧客の心にブランドを届け、顧客の心をときめかせ、新たな行動を促すにはどうすればいいのだろうか。カワサキ氏は、これを可能にする優れたブランドを確立するための3つの原則を紹介した。
1.好かれること
「個人であれ、企業であれ、好かれなくてはならない」とカワサキ氏は語る。企業に対する不信感が強まる一方で、顧客の要求水準がますます高くなっている昨今、これは非常に困難な課題だ。
カワサキ氏は次のような例を紹介した。英航空会社Virgin Atlantic Airwaysのリチャード・ブランソン最高経営責任者(CEO)はかつて、「Virginを利用したことがあるか」とカワサキ氏に聞いたそうだ。カワサキ氏は「利用したことはない。他の航空会社を使っている」と答えた。するとブランソン氏はひざまずき、カワサキ氏の靴を磨くまねをしたのだ。「そのときから私はVirginを利用するようになった」と同氏は振り返る。
カワサキ氏によると、好かれるようになるために重要なことは「イエス」を基本とすることだという。「私はこれまで仕事でずっとそうしてきた。そこに付け込まれて不都合が生じることはめったにない。良好な関係を築くことによるメリットが得られる場合の方が多い」と同氏は語った。
2.信頼を構築する
「好かれてはいるが、信頼されてはいない、ということもある」とカワサキ氏は強調する。「信頼を構築することは、力学的な流れを理解するということだ。相手に自分を信頼してもらいたいのなら、まず自分の方から信頼を示す必要があるという。「米Amazon、米Zappos、米Nordstromはいずれも、顧客を信頼し、顧客の有利になるような顧客ポリシーによって信頼を構築した」と同氏は述べた。「例えば、Amazonは電子書籍で1週間の返品ポリシーを設定している。多くの人が電子書籍を同社から購入するのは、この返品ポリシーがあるからだ」
カワサキ氏によると、企業が信頼を獲得するには発想を転換する必要があるという。「パイを食べる人ではなく、パン職人になるのだ」と同氏は説明する。「食べる人にとっては、パイの大きさは決まっており、世界はゼロサムゲームとして見える。他の人がパイを食べれば、自分の食べる分が少なくなるので、できるだけ早く食べなければならない。だがパン職人にとっては世界が違ったふうに見える。もっと多くのパイを焼けるし、クッキーやケーキを作ることもできるのだ」
3.完璧な製品/サービス
優れたサービスを提供するだけでは不十分だ。他社との競争で抜きん出るには、圧倒的に優れた製品を開発する必要がある。「人を魅了しようと思えば、ガラクタではなく素晴らしいものを提供すればいいのだ」とカワサキ氏は語る。「多くの機能を備え、ユーザーの悩みを解決するインテリジェンスを装備していることが完璧な製品の条件だ。サービスも完璧であることが求められる。ソフトウェアビジネスにおいては、それはソフトウェアを中心としたエコシステムだ」
「人を魅了する技術」に関するカワサキ氏のセッションは、今回のAIIM Conferenceのテーマである「情報管理」からやや外れた内容だったが、来場者の胸に強く響いたようだった。
「カワサキ氏のプレゼンテーションのやり方も、彼が述べた原則に基づいていると感じた」と米中西部から来た匿名の情報管理者は話す。「特別であること、目立つこと、そして人々とつながることが、競争から抜け出したいと考えている企業にとっての基本原則だ」
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