Microsoft、Amazonの反応は?
IaaSとPaaSの一体提供は当然の進化? Googleがもくろむ“大胆な一手”
Googleは、IaaSとPaaSが一体化したサービス群を提供したいと考えている。市場の成熟に伴い、他の大手パブリッククラウドベンダーもこれと同じ方向で環境を丸ごと網羅しようとしてくるものとみられる。
米Googleは、利用者がクラウドサービスを検討する際にIaaSとPaaSを厳密に区別しなくても済むようにしたいと考えている。クラウド市場の成熟に伴い、他の大規模クラウド事業者もこれと同じ方向に進みそうだ。
「Google Cloud Platformディベロパーロードショウ」という一連のイベントで、同社関係者は、IaaSとPaaSを1つに融合する必要性について語っている。この目標の実現にはまだやるべきことが多いと認めながらも、いずれは利用者が簡単に階層間を行き来できるようなサービス群を提供することを目指すという。
2014年8月に米マサチューセッツ州ケンブリッジで開催された同イベントにおいて、Googleのプロダクトマネジャー、ダン・ベルチャー氏は「『Platform as a Service』(PaaS)というものと『Infrastructure as a Service』(IaaS)というものが別々に存在するとは考えない。それよりも、Googleが管理するレベルと利用者が管理するレベルを1つにつなげて一体化したい」と語った。
IaaSかPaaSかの選択を迫られる開発者は「帯に短し、たすきに長し」という状況に直面することが数え切れないほどある。クラウドを運用しつつ、そうした二者択一のシナリオをなくすには、まだまだ多くの改良が必要だとベルチャー氏はいう。
「言うまでもないことだ。この流れは3年前から始まっており、今後も続くだろう」と語るのは、米コンサルティング会社Cloud Technology Partnersの上級副社長デビッド・リンシカム氏だ。インフラにはその上に載せる階層が必要で、開発者にはアプリケーションを実行するインフラが必要なのだから、それらを統合する必要性は考えるまでもないというわけだ。
「将来は、どこまでがどのサービスで、どこからが別のサービスか、分からなくなるだろう。全部が1つにつながって連係すれば、より多くの価値が生まれるから、それはいいことだ」とリンシカム氏は続ける。
米調査会社Gartnerのリサーチ担当副社長リディア・リョン氏によると、クラウドに移行する企業が増えてきて、単なるインフラ以上のものが求められているという。「高速VM(仮想マシン)の実現は素晴らしかったが、誰しも、これができるなら次はあれもこれもとなる」(リョン氏)
Googleは2014年3月にマネージドVMの提供を開始し、これをCompute EngineとApp Engineの中間に位置付けている。同社はまた、Cloud Debuggerとデータプールもサービス層の間のギャップを埋めるツールとして挙げる。
「区別が完全になくなるとは思わないが、いわばPaaS寄り、IaaS寄りといったものになってくるだろう。簡単には分類できないものが必ずある」とリョン氏は語る。
マネージドVMは基本的にプラットフォームサービスだが、IaaSの要素もあるため、その部類に近いという。
IaaSとPaaSの区別は曖昧
Googleは、「Google App Engine」でプラットフォームサービスを開始し、次いで「Google Compute Engine」でインフラストラクチャサービスに広げた。米Microsoftも、クラウドサービスの提供をプラットフォームサービスから出発している。米Amazonはこの流れとは逆で、最大級のインフラストラクチャサービスである「Amazon Web Services」から始めている。この3社は全て、いずれ2つのサービスのギャップをなくしていくだろうが、サービス拡大に必要な作業が一番多いのはAmazonだろうとアナリストは見ている。
PaaS向けソフトウェアベンダーの米Pivotalでテクノロジーシニアディレクタを務めるアンドリュー・クレー・シェーファー氏によると、GoogleはPaaSからクラウドサービス提供を開始したため、IaaSとPaaSの統合がやりやすいという。
「こうした分類はもともと不完全で曖昧だった。SaaS(Software as a Service)のミームから派生した便宜上の分類にすぎない」とシェーファー氏は語る。
GoogleのApp Engineは、Googleの無限のスケーラビリティというパラダイムをもたらしたが、シェーファー氏によれば、それは開発者にとって必ずしもとっつきやすいものではないという。
Googleが今回の声明で言いたいのは“エンタープライズIT開発なら、まずGoogleに”ということであり、それをうのみにする開発者がいてもおかしくはない。そう指摘するのは米調査会社451 Researchのアナリスト、カール・ブルックス氏だ。「Googleのクラウドサービスは、開発推進手段として独自の地位を確立しようとしている。(開発者が)Googleのソフトウェアやモダンアプリの開発構想にそっくりそのまま乗っていく気なら、それもありだろう」(ブルックス氏)
ただ、Googleのこうした動きは特定の開発者を引き寄せはしても、企業の関心を引くものではなく、あまり新規顧客を呼び寄せる役に立ちそうにない。ブルックス氏も「企業相手のクラウドの世界では、『ほら、見てください。こんなことができます』と言っても、企業の方は顔を上げて『それがどうした?』と言うだけだ」と付け加える。
Googleは、いつごろ目標を実現する予定なのか、他のどんなツールを検討しているのかについては述べなかったが、やるべきことが多いという点は認めている。
前出Cloud Technology Partnersのリンシカム氏は、シームレスな統合への動きとともに、バンドルシステムの価格体系も変わる可能性が高いという。各クラウド事業者は「ローカルシステムを使ってクラウドへポーティングするよりプラットフォームサービスを利用するメリットは何か」という疑問にも答える必要があるだろう。
「現行のオンプレミス環境を超えないまでも、せめて同等の環境を提供する必要がある」とリンシカム氏は語る。
また、前出Gartnerのリョン氏は、大手ベンダーが総取りへ向かう流れは、大手以外のベンダーにも影響し得るという。小規模クラウド事業者には、Googleのように大規模な投資を行う資金はない。彼らにとって、Googleの動きは新たな障壁になりかねない。
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