SDNをレイヤー4-7に【後編】
導入して分かる、レイヤー4-7オーケストレーションの思わぬありがたみ
Software Defined Data Centerのプロビジョニングとライフサイクル管理自動化のため、レイヤー4-7ネットワークオーケストレーションツールの必要性が高まっている。だが、メリットはそれだけに止まらない。
前編「大手ベンダーも注目、ネットワークオーケストレーションとは何か」に引き続き、レイヤー4-7ネットワークオーケストレーションツールについて考えてみたい。
英Forrester Researchのプリンシパルアナリスト、アンドリュー・カインドネス氏は、データセンター周囲のレイヤー4-7オーケストレーションに注目が集まる一方で、最も恩恵を受ける可能性があるのはワイドエリアネットワーク(WAN)であると指摘する。
レイヤー4-7オーケストレーションへの期待はさらに膨らむ
「われわれのWAN上での動きは、ある都市からハブへ飛びそこから他の飛行機に乗せられるという航空の世界よりも、どちらかというと出発地から目的地まで複数の経路を選択する高速道路システムに似ている。しかし、コントロールセンター(のようなポイント)がないため、データセンター上のレイヤー4-7サービスは、あらゆる場所に分散して置かれる必要がある」と、カインドネス氏は語る。ハブアンドスポーク型からの移行は、レイヤー4-7サービスを展開する方法を単純化するニーズを生み出す。
独Lufthansa Systemsのシニアシステムデザインエンジニア、マーカス・ボーケル氏はレイヤー4-7オーケストレーションの将来性に大いに期待する1人だ。同社はドイツを代表する航空会社であるLufthansa Group傘下のマネージドサービスプロバイダーである。
米国ニューヨークにあるLufthansaのオフィスの1つでは、従業員は月に2回、フランクフルトの同僚とのビデオ会議に参加する。従来のネットワークアーキテクチャでは、いかなるポリシーおよびアプライアンスも、基本的にトラフィックは静的でなければならないとされており(それは、一度設定されたポリシーが常に変わらないことを意味する)、そうでないときは独ケルスターバッハ市にいるボーゲル氏と彼のチームによって手動で再構成する必要があった。
より効果的なアプローチを期待して、ボーゲル氏は米Cisco SystemsのApplication Policy Infrastructure Controller Enterprise Module(APIC EM)をテストしている。これは、CiscoのApplication Centric Infrastructure(ACI)ファブリックでアプリケーションレベルのネットワークポリシーを管理するための中央集中型コントローラーとして機能する。このコントローラーはCiscoの組み込み型インテリジェントWANおよびネットワーク監視アプリケーションをサポートし、米CitrixのNetScalerロードバランサと統合できる。
ボーゲル氏はAPICを使用してロングアイランド支社のローカルIT管理者にビデオ会議中のトラフィックを最適化するための権限を提供したいと思っている。「私が“ものすごい”という言葉を使う機会はそれほどない。しかし、Ciscoにより設計されたこの製品は、ものすごい」とボーゲル氏は言う。
その他のドライバー:クラウドとコンシューマー
レイヤー4-7サービスをオーケストレートすることは、クラウドに依存する企業にとって次第に不可欠になっている。データセンタースペース事業を支援する不動産コンサルタント会社、米Savills Studleyのリック・ドレッシャー氏によれば、多くの企業はクラウド供給業者間で進行している価格戦争を利用し、最も低価格の業者へ作業負荷を移行させようと熱望しているからである。
さらに、電力コストなどの要素もプライベートクラウドへの移行を加速させる。太平洋岸北西部では多くの再生可能なエネルギーがある。1キロワット当たり3セントの低いレートは、1キロワット当たり17セントであるニューヨーク市と比較するとかなり安い。
「もしその日のピークの間だけ(ニューヨークにいる)ユーザーの近くにいるためにデータセンターを必要とするだけなら、そして夜にはより安価な場所へ転じることが可能なら、顧客は年間の電気料金を数十万ドルは節約できる。これを手動で実行するのはあまりに複雑だが、オーケストレーションは、その作業を確認するためにとても重要だ」とドレッシャー氏は言う。
「より動的で自動的なネットワークに対する取り組みはまた、リアルタイムに顧客の要求に反応しようとする企業によって推し進められる」とカインドネス氏は言う。
グローバルなスーパーマーケットチェーンの英Tescoは、同社の経営する幾つかのガソリンスタンドで、パーソナライズされた顧客体験を提供している。顧客がタンクを満杯にすると、小さなデバイスが顔認識ソフトウェアを使用して年齢や性別を推理し、近くのモニターがその人の属性に合った広告を表示する。また、アジアのある小売業者はセンサーを使用して客が試着室に持ち込む衣料品を識別し、客が試着している間のBGMを最適化するという。例えばオシャレ系の服であればポップミュージックを、ヒップホップファッションの場合はラップミュージックを流し始めるのだ。
これらの企業は必ずしもSDNやネットワーク仮想化を使用していないが、「彼らは何かをするには今のままではリソースが不足していることに気付いている。全てのことが同時にできるわけではない。従って、サービスにメリハリを付けるため、そしてリモートサイトで起きていることに対して最良のリソースを見つけるためにSDNが必要だ」とカインドネス氏は言う。
最良の方法の発見
これまでのSDNやネットワーク仮想化がそうであったように、レイヤー4-7オーケストレーションへのアプローチはベンダーによって異なる。
現在のところ、主流のモデルはCiscoと米VMwareを中心に展開している。
2014年8月、VMwareは同社のネットワーク仮想化プラットフォーム「VMware NSX」と米F5 Networksのオーケストレーションプラットフォーム「BIG-IQ」間の統合を提供することで提携したと発表した。VMwareは2013年末に米Palo Alto Networksの仮想ファイアウォールにNSXユーザーがオーバーレイネットワークを自動的にプロビジョンできるようにしているが、今回の提携はこれに続くものだ。
Ciscoは最近、米Embraneを買収したが、それに先立って2014年にEmbraneをACIエコシステムに加えた。Embraneにとってこれはターニングポイントだった。同社は単にオーケストレートするプラットフォームの提供から、米CitrixのNetScalerのように、サードパーティーのサービスに対するレイヤー4-7オーケストレーションとライフサイクル管理を促進する戦略へと舵を切ったのである。
幾つかのレイヤー4-7アプライアンスベンダーは、この市場で自分達の要求を主張しようとした。2014年5月、ロードバランサベンダーである米Kemp Technologiesは、任意のベンダーからベアメタルサーバ上の単一プラットフォームを通して管理者にレイヤー4-7サービスを挿入させた。また、2014年12月には新設企業の米Avi Networksがレイヤー4-7サービスをプロビジョン、オーケストレート、管理するコントローラーを発表した。
オープンソースの世界では、OpenStackのネットワーキングプロジェクトであるNeutronがロードバランサやファイアウォールをサービスとして提供するためのAPIに取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
4
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
5
経営幹部の偽装で168億円送金 ディープフェイク詐欺を「訓練」で止められるか
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
8
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
9
テレワークやBYODでリスクが拡大、デバイスの多様化を弱点としない管理方法とは
-
10
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー