Linux仮想デスクトップは誰もが必要とするものではない。だが、Windows仮想デスクトップのライセンス料が不要になるという大きなメリットがある。
「Linux」の仮想デスクトップを導入する最大のメリットはライセンスにある。オープンソースの仮想デスクトップインフラ(VDI)では、「Microsoft VDI」ライセンスに掛かる組織の出費を削減または一掃できる。
米MicrosoftのVDI環境における「Windows」のライセンス料は、高額かつ複雑なことで知られる。例えば同じ顧客向けでない限り、VDIプロバイダーが1つのホストで複数の仮想マシン(VM)を運用することは認められず、マルチテナントの多くのメリットを薄れさせている。
Microsoftは、企業向けライセンス制度「ソフトウェアアシュアランス(SA)」を契約した顧客には多少譲歩して、ユーザー当たりのライセンスモデルへと移行している。これで複数のデバイスから仮想デスクトップへアクセスする従業員のコストは低減される。
ただしこのモデルが利用できるのはユーザー250人以上の組織のみ。中堅・中小企業がライセンスコストを引き下げるためには、オープンソースVDIなど他の手段を模索する必要がある。Linuxは、少なくともライセンスの観点からは無料で、管理もしやすい。
オープンソースというLinuxの性質も重要なメリットになる。オープンソースプロジェクトでは、世界中のエンジニアが専門知識や経験を生かしてソフトウェアの向上に貢献する。Windowsなどの商用製品のように宣伝を意識する必要もない。Linuxディストリビューターは多数存在しているので、Windowsに比べてOSとしてのカスタマイズ性も高い。Linuxはまた、コンピュータを使った設計や3D処理、ビデオ編集など、リソースの消費が多いアプリにも適している。
ただしLinuxがあらゆる状況で完璧に機能するというわけではない。Windowsのようなサポートは提供されず、全てのLinuxディストリビューションがどれも同じというわけではない。しかも、仮想デスクトップユーザーを新しい環境へ移行させるのは容易ではない。
Linuxでの最大の課題は、VDIユーザーが日常的にアクセスしているWindowsベースのプログラムをどうするかという問題だ。組織によっては、それほど苦労せずにLinux仮想環境へ移行できるケースもある。一方で、2つのVDIプラットフォームでWindowsとLinuxを運用した方がいい企業もある。ただその場合、IT部門のVDIサポート負担も倍増する可能性がある。
最大の不確定要素はもちろん、現在のような形のデスクトップコンピューティングの行く末だ。モバイル端末での利用を前提にシステム開発や運用を進めるモバイルファーストの考え方が浸透し、一部の組織でWindowsアプリケーションへの依存が薄れる中で、MicrosoftがVDIライセンス料を値下げする可能性もある。一方、Linux VDIはいずれ、もはやWindowsアプリを必要としなくなった企業にとっての選択肢として魅力が増すかもしれない。
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