スマートフォンのディスプレイは、購入の判断に最も影響を与えることが多い。事実、スマートフォンの使い勝手において最も影響を与えるパーツなのは間違いない。ディスプレイは、スマートフォンを構成する部材で最も長時間ユーザーと接するだけでなく、重要な操作デバイスでもある。そのため、ディスプレイのサイズや表示画質が不十分だと、ユーザーは操作性に不満を持つことになる。しかし、ディスプレイの性能を定義するスペックの項目は数が多いため、適切な判断が難しいかもしれない。スペックシートには、ディスプレイの種類、サイズ、解像度などを記載している。いずれも、製品選択の検討で重要な情報だ。
スマートフォンのスペックシートでディスプレイのセクションには、多くのアルファベットが並ぶ。「AMOLED」「Super AMOLED」「IPS」「LCD」「OLED」「Retina」「LED」「TFT」など、一般的なものを幾つか挙げるだけでもこれだけある。それぞれ、ディスプレイを支える特定のテクノロジーを指している。
この記事を書いた2016年3月後半において、ディスプレイに関して最良のオプションは、AMOLEDとIPSだ。Super AMOLEDはSamsung Electronicsが独自に開発したAMOLEDを指す。また、ユーザーの中にはLCDをLEDと呼ぶこともまれにあるが、これらはまったく別なものだ。IPS(In Plane Switching)は、液晶駆動方式の1つで、非常に広い視野角を確保しているため、ディスプレイパネルに対する視線の角度を変えても見えるコントラストや色が変わらない。
AndroidスマートフォンにはAMOLEDを採用するモデルも増えつつある。AMOLEDは有機ELを利用する新しいディスプレイ技術で、深い黒と鮮やかな色彩を表示する。これは、AMOLEDディスプレイの各ピクセル(輝点)が、それぞれ独立して発光するためで、個別に完全にオフにすることで深い黒が再生できるという。また、ハイコントラストで輝度も高いため周辺光の反射も抑えてくれる。AMOLEDはバックライトが不要なので、デバイスの薄型化が可能で、LCDよりもバッテリー効率が高い。
AppleはiPhoneと「iPad」で今もLCDを採用している(Apple Watchは有機ELディスプレイだ)。LCDは実証済みの技術で、色のバランスや白の明るさは、有機ELと比べて優れている。ただ、バックライトを備えるため、黒の表示は少し不鮮明だ。IPSは、従来のLCDと比べ、さまざまな角度で見やすいディスプレイを実現する。ただし、より強力なバックライトが必要なため、短時間でバッテリーがなくなってしまう可能性がある。IPS方式ディスプレイは、ハイエンドのスマートフォンやファブレットで採用している。TFT(Thin Film Transistor)は、従来のLCDで長らく使ってきた液晶駆動方式だ。TFTは製造コストが安いがIPSのような広い視野角は確保できないため、ローエンドのスマートフォンで採用している。
以上のような技術を理解した上で、解像度のピクセル数やベンダー独自のディスプレイ技術に名付けた“マーケティング”用語を把握することになる。この手の用語で最も有名なのは、Appleの「Retina」だろう。Retinaは、1インチ当たりに並ぶピクセル数で示す画面密度が高いことを表している。Retinaディスプレイ(スマートフォンに搭載した300ppiクラス)を一定の距離(約30センチ前後)から見ると、個別のピクセルを見分けることができない。現在、ハイエンドのスマートフォンで多くのモデルが画面密度300ppiを超えている。ただし、RetinaはAppleの商標登録用語なので、この用語を使っているのはAppleだけだ。
他にも、「傷防止/耐傷性」「Gorilla Glass」「サファイア」などと記載するスペックシートを見たことがあるだろう。これらはディスプレイパネルに使うガラスに導入する保護技術だ。「Gorilla Glass」はCorningが開発したガラスで、スマートフォンを落としてもディスプレイパネルは粉々にならない。Motorola Mobilityも、これに似た「Shattershield」という技術を保有している。
ディスプレイのサイズも重要な検討事項だ。ディスプレイサイズは、ディスプレイの対角線で測る。ほとんどのAndroidスマートフォンは5型以上だが、Appleの「iPhone 6s」は4.7型だ。たまに使用するくらいであれば、必ずしもファブレットサイズ(ディスプレイサイズ5.5型以上)を持つ必要はない。しかし、映画のストリーミングができるモバイルメディアデバイスとして利用する場合は、映画を快適に視聴できる十分なディスプレイサイズを検討してほしい。
ディスプレイが大きいということはスマートフォンの本体も大きいということだ。また、ディスプレイサイズが大きいと、片手で操作しにくくなる。ただ、デバイスを構成する部材は小型化が進んでいて、以前と比べると同じサイズのボディーにより大きいサイズのディスプレイを搭載できるようになっている。
最後に、ディスプレイの解像度について説明しよう。ディスプレイには、「ピクセル」と呼ぶ“光る点”(輝点)が碁盤の目のように縦横に並んでいる。この並んだピクセルの数を解像度と呼んでおり、スペックシートでは縦方向に並んだ数と横方向に並んだ数を並べて記載することが多い。一般的な解像度にはフルHD(1920×1080ピクセル、一般的なHDTVと同じ)とクアッドHD(2560×1440ピクセル)がある。ただし、解像度はスマートフォンのモデルによって当然異なってくる。iPhone 6sのディスプレイは1334×750ピクセルだが、ソニーの「Xperia Z5 Premium」のディスプレイは3840×2160ピクセルだ。
ディスプレイに関するスペックで、最近になって解像度以上に重要になってきたのが、ppiや画面密度、ピクセル密度と呼ぶ項目だ。ハイエンドのAndroidスマートフォンの画面密度は500ppiを超えているが、iPhone 6sでは326ppiと低い。ppiが高いほど画面密度が高く高精細な描画ができるようになる。ピクセル密度が300ppiを超えていれば、ディスプレイを至近距離で見ない限り、肉眼でピクセルを見分けることはできない。ただし、画面密度が高いディスプレイパネルの生産効率は低いため、それが製品価格を上げることにつながりかねない。
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