私たちはどこで道を誤ったのか
40年前の人が夢見た「完全ペーパーレスオフィス」が実現しないのはなぜ?
多くの企業では、ペーパーレスの価値を認識しているにもかかわらず、さまざまな理由で後回しにされ、ペーパーレスオフィスはなかなか実現しない。だからといって、ペーパーレス化を諦めてもいいものだろうか?
今や昔の1975年、人々は将来のビジネスオフィスの在り方について甘い考えを抱いていた。この年に出版されたMcGraw-Hillの「BusinessWeek」(現在はBloombergが発行)には、「未来のオフィス」と題した記事が掲載されていた。この記事では、1980年代から1990年代にかけて記録処理が完全に電子化される時代が到来し、紙が不要になると提唱されていた。そして2016年現在、ペーパーレスオフィスソリューションと電子機器が豊富に存在しているにもかかわらず、その夢を実現すべく、いまだに悪戦苦闘している。私たちはどこで道を誤ったのだろうか。
ペーパーレスオフィスという目標を実現する上で基本的な障害となるものの1つがコストだ。オーバーヘッドを削減する手段としてであれ、環境に配慮した自己犠牲心を示すためであれ、紙を使わない環境に優しいオフィスを実現するには、テクノロジーへの投資が必要になる。だが、多くの企業には、そのようなテクノロジーに投資する余裕がないのが実情である。
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完全にペーパーレスなビジネスオフィス環境では、事業計画について技術的な問題が多数発生する可能性もある。プリンタと紙を排除すると、全従業員にPCを用意するか、会社のデジタルファイリングシステムに対応したモバイルデバイスを支給しなければならなくなる。紙が手頃な価格で入手できることを考えると、こうしたことが高い壁と見なされる場合もある。あらゆるところでコストカットに励んでいる企業にとっては特にそうだろう。
また、ペーパーレスオフィスでは、デジタルドキュメントを処理する原動力となるソフトウェアとドキュメントを安全に保管するハードウェアも必要になる。多くの企業はクラウドバックアップやテープバックアップのようなセキュリティが確保されたドキュメントの保存手法をいまだに受け入れていない。そのため、現在も紙が最も簡単でコスト効率の高いソリューションになっている。
それから、法的な問題もある。DocuSign社の「DocuSign」、Adobe Systemsの「Adobe Sign」、HelloSign社の「HelloSign」などの電子署名サービスが登場している。にもかかわらず、契約から銀行ローンに至るまで、大多数の機関で行われている標準的な手続きでは、相変わらず手書きの署名が要求される。今なお合格水準以上のテクノロジーにおける調整が不足していることで、ペーパーレスオフィスは厄介で法的にややこしい命題になっている。
とはいえ、完全ペーパーレスまたは部分的なペーパーレスを目指すべき根拠は多数ある。紙のドキュメントを保持しておくという古めかしい慣習は今も広く求められている。だが、だからといって、オフィスでの紙の利用を大幅に制限することを諦める必要はない。スキャナーを使用することで、紙のコピーが必要になるまでドキュメントを電子的に保存しておくことができる。公式書類の余白やフォントサイズを調整して両面印刷を利用すれば、紙の消費量を半減させられる。また、職場のプリンタ利用に制限を設けることで、無駄な印刷を大幅に削減できる可能性もある。それから、オフィス全体にリサイクル用の分別箱を設置すれば、いらなくなった紙を無駄にしないよう従業員に促すことができる。こうしたステップは自然資源の節約につながるだけではない。それを実践する企業にも有益な効果をもたらす可能性がある。例えば次のようなものだ。
- オーバーヘッドコストの削減
- 電子ストレージを使うとデータの保管に必要な物理スペースが小さくなる。標準的なPCのHDDが、どれほど多くのデータを保存できるか考えてみてほしい。書類整理棚をHDDアレイに置き換えると、ビジネスオフィスはずっと小さなスペースでドキュメントを保管できるようになる。これはオフィスの賃貸コストや所有コストに大きく影響する可能性があり、早々に廃業を余儀なくされるか、長く続いて地盤を築くかの境目になることもあり得る。
- 効率性と利便性
- 電子的なドキュメントは簡単に検索できる。情報のデータベース全体をデジタル形式で保持しておくことで、ドキュメントを瞬時に探し出すことが可能になる。非常に整理整頓が行き届いたオフィスでも、紙のドキュメントを探し出すにはもっと時間がかかる。また、見つからない可能性も高いだろう。
- 内部文書と情報セキュリティ
- 機密情報の保護という観点では、書類整理棚に鍵を掛けるよりもパスワードによる暗号化を利用する方がはるかに効率的だ。そのため、ペーパーレスオフィスの方が機密情報の漏えいが発生する可能性はずっと低くなる。
「未来のオフィス」の記事が公開されてから40年以上の月日が流れている。今では大半の人が「真のペーパーレスオフィスが実現することはないかもしれない」と考えている。データのデジタル化によって紙の必要性が大幅に減少していることは紛れもない事実である。だが実際のところ、完全に紙を排除することは決してできないのだろう。良くも悪くも、紙は業務の中に根付いている。現在の目標は、紙の消費を抑えて1枚でも使用を減らす洗練された手法を採用することである。
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