人工知能と機械学習もGPUで進化する
徹底解説:GPUコンピューティングが急成長する理由と減速する懸念(1/2 ページ)
かつてゲームでしか役に立たない技術と評価されていたGPUが企業向けデータセンターに進出し、機械学習や人工知能といった成長著しいプロジェクトに貢献しようとしている。
遅々として進まないデータ分析プロジェクトに苦慮しているITプロフェッショナルは、3Dゲームという思いがけない分野から解決の着想を得るかもしれない。
Graphics Processing Unit(GPU)はこれまでゲーマーの要望を満たすためにその機能を強化してきた。しかし、今では企業向けデータセンターの新たなニッチ分野として注目する関係者が増えている。451 Researchのアナリストを務めるジェイソン・スタンパー氏によると、従来型ワークロードの中にはGPUの並列アーキテクチャに適しているものがあり、GPUで高速化した演算処理の恩恵を受けるという。
「GPUには最新のモデルで3500基を超える演算コアがあり、大画面を構成する膨大な数のピクセルでも一瞬の演算で描画できる。これをデータベースの行と列に当てはめれば、データを驚くほど高速に処理できる」(スタンパー氏)
CPUの動作クロックが2年ごとに倍増していた時代には、GPUがどれほど演算処理を高速化しても、その効果は特定の並列処理に限られていたため需要はほとんどなかった。だが、CPUの動作クロックの上昇ペースが鈍るにつれ、高度な演算処理を必要とするタスクを抱えたユーザーは、CPUの代替としてGPUに目を向けるようになった。GPUは動作クロックではCPUに劣るものの、搭載する演算コアの数だけのスレッドを並行して処理できる。幾つもの変数による影響を同時に処理しなければならない物理シミュレーションなどの自然科学演算や気候現象などの実世界をシミュレーションする演算モデリングといった分野では、早くからGPUコンピューティングを導入してきた。
「現代の天気予報は、背後にあるスーパーコンピュータで何千もの要因を並列して処理してモデルを構築して算出している」とGPUベンダーのNVIDIAでデータセンターGPUコンピューティングの担当ディレクターを務めるロイ・キム氏は説明する。
いち早くGPUを汎用演算処理に利用し始めたのはスーパーコンピュータ技術者や科学研究者だが、一方で企業が収集して分析する用途でもデータの量はCPUの進化をしのぐペースで増大している。
SQLのためにCPUからGPUに移行する
ハーバード大学の中東研究課程を修了したトッド・モスタック氏は、卒業論文のために何億件というツイートを収集して「アラブの春」を検証した。モスタック氏の目的は、ツイートの分析を通じて地理空間を可視化することにあったが、CPUの演算処理能力を使うシステムを使っていて問題に突き当たった。
「そうした分析処理には1晩中かかるものもあった。朝起きてから自分の間違いが判明し、演算処理を最初から全部やり直さなければならないこともあった」とモスタック氏は振り返る。これだけの負荷に対応できる大型サーバクラスタも利用できなかったモスタック氏は、市販のゲーミングGPUを使って自前のデータベースシステムを構築した。
彼がCEOとなったMapD Technologiesは、学生時代の試作品から生まれたSQL対応データベースのソフトウェアプラットフォームを構築している。GPUは3Dゲームの高精細でスムーズなグラフィックス描画処理以上に、SQLクエリの処理という、ゲームに比べると日常的な作業の高速化でも理想的だとモスタック氏は言う。
「突き詰めて言えばSQLはセット言語だ。そのセットにある全ての行に同じ作業を割り当てる。そのセットは何十億もの行で構成していることもある。しかし、GPUならば、搭載する演算コアの1つ1つに1行ずつ割り当てることで並列処理ができる」(モスタック氏)
GPUはあらゆる作業に適しているわけではない。明らかに並列的でGPUの恩恵を最大限に引き出せるプロセスがある一方で、遂次性が高くCPUで処理するのが最適なプロセスもある。また、既存のアプリケーションではプログラムソースコードをGPUのファンクションに対応できるようにリファクタリングを行うか、GPUで動作させる専用のものを新たに開発する必要がある。
こうした問題についてモスタック氏は、「その中間に位置する幅広いクラスの問題もある。それを並列処理するのは簡単ではない。だがコードをうまく構造化すれば、ここでもGPUの恩恵を引き出すことができる。これは演算をデータにどうマッピングするかという問題だ」と述べている。
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