製品選定前に読んでおきたい基礎技術 バックアップ編【第2回】
基礎から分かる、企業システムに求められるバックアップ5カ条(1/2 ページ)
企業システムで求められるバックアップ要件を基に、バックアップの種類や手法、格納先、そして仮想環境のバックアップ方法について解説する。
連載第1回「いまさら聞けない、バックアップ技術の学習で欠かせない3つの基礎」では、バックアップ/リストアの必要性およびRTO(目標復旧時間)/RPO(目標復旧時点)について解説した。第2回はバックアップ手法や必要な媒体、ツールをテーマにする。まずは企業システムに求められるバックアップ要件の例を挙げる。
企業システムに求められるバックアップ
- できるだけ最新のデータを、短時間でバックアップすること
- 障害時に必要とされるデータを、短時間で復旧すること
- 顧客情報や帳票、メールなどデータを長期間保管し続けること
- 万一の障害や災害に備えて、データを遠隔地保管する
- 導入コストや管理・電力コストなど、コストを考慮すること
上記はシステムのサービスレベルを維持するために、バックアップに求められる要件の代表例である。これらを実現するための基礎知識をお伝えする。
1.システムバックアップかデータバックアップか
はじめに、バックアップは大きく2つの種類に分類できる。
- システムバックアップ
- データバックアップ
1つ目のシステムバックアップとは、OSを中心に一定の容量で変更点の少ない領域を対象としたバックアップを指す(図1)。サーバ環境ごとバックアップする場合がほとんどだ(クライアントPCを対象にした場合はイメージバックアップと称することもある)
頻繁に取得するものではないが、何らかの理由でサーバが壊れ復旧が困難と判断した場合、システムバックアップで取得したバックアップをリストアすることで、バックアップを取得した時点のサーバ状態へ戻すことができる。
主にシステムの新規構築時や機能改修などのパッチ適用時、新たなアプリケーションを導入したときなど、対象システムの構成に変更が生じた際に取得する。
2つ目のデータバックアップは、変更頻度の高いデータのみをバックアップすることを指す(図2)。主にデータベースに保存されたデータや共有フォルダに保存されたファイル、アプリケーションデータをバックアップする。システムバックアップと同様に、バックアップ対象のデータに限り、バックアップ取得時までの状態に戻すことを想定している。バックアップ対象のデータは、頻繁に更新される変化の大きいデータに限定し、比較的高い頻度でバックアップを取得する。
システムバックアップはシステム全体をバックアップするので、時間や保管容量といったリソースを多く消費する。従って毎時や毎日という短い間隔でのバックアップ取得には向いていない。一方データバックアップは更新頻度の高いデータに限定してバックアップを取得するため、システムバックアップと比べてバックアップのデータ容量や取得時間を抑えることができるのが一般的だ。この2つのバックアップを適切に組み合わせて使い分けることで、高いRTO/RPOを実現していくことが基本となる。
2.OSコマンドかバックアップツールか
次にバックアップ手段に関してお伝えする。一番シンプルな手段は、OSに付属するコマンドやツールを使うことだ。具体的には以下のようなコマンドを使う。
- UNIX: tar、cpio、dumpなど
- Windows: NTBackup/Windows Server Backup
OSのコマンドやツールはOSで実行するため、バックアップを取得したいサーバへログインして取得する必要がある。運用性は高くないが、定期的にバックアップをしない環境や、管理者の目が行き届く小規模環境ではこの方法で十分だろう。
もう1つはバックアップツールの活用だ。現在ほとんどの企業において何らかのバックアップツールを使っているだろう。バックアップツールはさまざまなベンダーが提供しており、製品ラインアップは非常に豊富だ。ほとんどのバックアップツールが専用のGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を用意し、バックアップポリシーを一元的に管理できるようにしている。複数のバックアップポリシーを使い分ける場合は、バックアップツールを使った方が運用管理面で効果が高い。
バックアップツールはバックアップ/リストアが容易になるというメリットだけでなく、数多くの便利な機能を提供する。重複排除(次回紹介予定)機能が実装されたバックアップソフトを利用すれば、ストレージ領域を大幅に削減することも可能だ。ある程度のバックアップ規模を維持管理するのであれば、バックアップツールを利用した方がコスト面においてもメリットを享受できるだろう。
3.フル、差分、増分バックアップの違い
次に代表的なバックアップの手法を紹介する。以下のような手法が代表的だ。
- フルバックアップ
- 差分バックアップ
- 増分バックアップ
フルバックアップは、名前の通りバックアップ対象のデータ全てをバックアップすることを指す。基本的なバックアップであり、他のバックアップのベースにもなる。
差分バックアップは、名前の通りある時点からの差分だけをバックアップする手法だ(図3)。どこかの時点でフルバックアップを取っていることが前提になる。
増分バックアップは、前回取得したバックアップから変化のあった部分だけを取得するバックアップである(図4)。差分バックアップと似ているが、差分バックアップはある時点からの差分であるのに対し、増分バックアップは前回からの差分となる。
フルバックアップはコマンドでも実行可能だが、差分や増分バックアップは現実的にはバックアップツールを使うことになる。多くの企業システムでバックアップツールを活用し、状況に応じて必要な種別・手法を選んでバックアップを設計している。第1回で述べた通り、バックアップには非常に多くの格納領域が必要となる。適切なバックアップ種別・手法を用いることで、バックアップデータの格納領域を大幅に削減することが可能となり、結果としてコスト面や運用面でのメリットが享受できる。
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