NANDフラッシュ市場は製品が品薄状態になっている。従って、SSDの価格が急落してHDDを下回る事態はすぐには起こらないだろう。NANDフラッシュ製品の供給状況について、取引先ベンダーに確認しておこう。
本稿執筆時点では、世界的にNANDフラッシュの不足が生じている。その結果、SSDの価格が押し上げられている。こうした事態は、HDDを過去の遺物と考えるグループには悪い知らせだ。こうしたグループは、GB単位の価格ではSSDが近々HDDを下回るという予測を2015年頃から立てていた。
本稿では、NANDフラッシュ不足を引き起こした原因と、ストレージシステムを購入するユーザー企業にとってこの状況が何を意味するかを考えてみる。
半導体業界との縁が薄いと、ムーアの法則がニュートンの万有引力の法則や熱力学の3法則のように自然界における基本的な事実だと考えてしまうことが多い。だが実際のところ、ゴードン・ムーア氏は、半導体メーカーがトランジスタを小型化できる現行のペースを観測し、それが持続することを予測したにすぎない。
半導体メーカーが決める製品価格は、チップ密度の進化の影響を強く受ける。だが、同じように需要と供給の法則にも左右される。半導体の製造には高い技術力が必要だが、潤沢な資金も必要だ。ダイナミックRAMやNANDの製造では、製造工場に投資してから実際に半導体を製造するまでには、数十億ドルのコストと数年間の時間がかかる。
研究、機器開発、定期的かつ大規模な資本投資の必要性には相互に関係があり、それがフラッシュ事業における供給過多と供給不足のサイクルをもたらしている。
供給不足のサイクルに陥ると、ベンダーはできる限り多くの製品を安定供給することで利益を上げる。あるいは、製品価格を引き上げることもある。企業は、利益を見込んで借り入れを行い、新しい製造工場を建設する。この製造工場が軌道に乗ると、新たな供給が生まれ、価格は下がる。そうするとベンダーは原価を下回る価格で製品を売らざるを得なくなる。1ドルでしか売れないチップの製造に1.10ドルかかる場合もある。だが、こうしたコストの大半は、製造工場建設のために借り入れた金額の利子が占める。こうなると、工場の操業を停止するのではなく、操業を続けて損失を少なくするしかない。やがて、新たな供給が満たされるつれて需要が高まり、同じサイクルが繰り返される。
ストレージビジネスでは、2008〜2009年頃からフラッシュが大きな要因となり、NANDの価格が平均的ユーザーに影響を与えるほどの事態になった。直近では2012年にNANDフラッシュの不足が生じた。当時、NANDは約10%値上がりした。もっと重要なことは、NAND製造工場が顧客への供給を制限したことだ。
この一時的な価格高騰はそれほど大きな惨事にはならなかったが、SSDベンダーのOCZは十分な割り当てを得られなかった。その結果、同社は現物市場に手を出し、粗悪な製品を高いコストで仕入れる羽目になった。最終的には、2013年の東芝によるOCZの買収へとつながる。
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