「ウェアラブルデバイスの普及は職場から」と専門家が明言する根拠作業者の安全性向上に大きな需要(1/2 ページ)

ウェアラブルデバイスは一般消費者向けよりもまず業務用途での普及が予測される。その理由とは。

2018年03月25日 05時00分 公開
[George ThangaduraiTechTarget]
画像 ウェアラブルデバイスが職場にやって来る《クリックで拡大》

 フィットネスや健康を目的とした一般消費者向けウェアラブルデバイスやスマート衣料は、会員制ジムと比べられることが多い。新しいものへの物珍しさが薄れていくと、それを使おうとする意欲も減っていく。

 最終的なデータは現時点ではまだ不明だが、数十件の調査では、フィットネス用ウェアラブルデバイス所有者の3分の1が6〜12カ月以内にそのデバイスを使わなくなり、それ以上長期になると50%以上が存在すら忘れていると結論付けている。このことは、少なくとも米国内において、一般消費者向けウェアラブルデバイスの市場の成長速度が予想よりもはるかに遅い理由の一部を表している可能性がある。

 スマート衣料市場の年間出荷数が2021年までに3100万着に達すると予測する調査会社は多い。ABI Researchもその1社だ。だが、同社は一般消費者向け製品には実用的な目的が少ないことから、出荷数は2019年をピークに減少に転じると見ている。もちろん、全体的には、ウェアラブル市場は全世界で徐々に拡大を続けるだろう。だが、IDCは2017年の出荷数1億1320万を倍増させるには、少なくとも4年はかかると予測している。

炭鉱のカナリアに代わるもの

 対照的に、業務用ウェアラブルデバイスは明確な目的を見いだしている。調査会社のTracticaは、企業用と産業用のウェアラブルデバイスは全世界で出荷数が爆発的に増加し、2015年の2300万台から2021年には6640万台に達すると予測している。

 わずか6年間という期間を考えれば、これは驚異的な飛躍といえる。Tracticaはビジネスに重点を置いた調査会社であり、市場のビジネスチャンスという点では慎重な見解を示すことが多い。しかし、作業者の安全性を向上するニーズだけを考えても、こうした予測が生まれる状況は理解できる。

 炭鉱業界は、一酸化炭素などの有毒ガスを検知して炭坑作業員に早期警告を発するのに1980年代までカナリア(小鳥)を利用していた。これは米国や英国で50年以上にわたって実践されてきた標準だったが、やがてデジタルテクノロジーによって「電子の鼻」が実現した。

 1982年に発明されたこのデジタルテクノロジーは進化を続け、手首に装着できるところまできた。最も進化したバージョンは、有毒ガスを検出できるだけでなく、炎や光強度、温度、湿度、落下を検出する機能を備える。こうした機能は、窒息やガス爆発という最悪の危機に直面する状況で働く炭鉱作業員にとって、飛躍的な進化になる。21世紀の鉱業界では、こうしたスマートウォッチが急速に新しい標準になっている。

世界初のスマートリングからの進化

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