デジタルエコノミーで打ち勝つために企業が採用することのできるデジタルビジネスモデルと、その成功のために必要なポイントについて、リサーチサイエンティストのステファニー・ウェルナー氏が解説した。
ステファニー・ウェルナー氏は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院の情報システム研究センターに勤務するリサーチサイエンティストで、『What's Your Digital Business Model? Six Questions to Help You Build the Next-Generation Enterprise(あなたのデジタルビジネスモデルは? 次世代エンタープライズ構築に役立つ6つの質問)』の共著者でもある。
本稿では、企業がデジタルで収益を上げ、デジタルエコノミーで頭角を現すために使っている4種類のビジネスモデルについて、ウェルナー氏に解説してもらった。4種類のビジネスモデルは以下の通り。
企業は仲介者を通じて商品を販売する。そのために、末端の顧客のことをよく知らない場合がある。サプライヤーモデルは構造において従来のビジネスモデルに最も近く、企業に対しては効率を高めるためのサプライチェーン最適化、価格競争、商品デジタル化の手段追求が求められる。
オムニチャネル企業は、製品やサービスを組み合わせて顧客が抱える問題の解決を目指す。オムニチャネルモデルでは、企業が顧客のデータを保有し、複数のチャネルを横断して顧客がその企業と取引できるようにする。
企業がテクノロジーにとらわれず、多くのビジネスで使用できるサービスを提供する。この種のデジタルビジネスモデルの実例としてはPayPalが挙げられる。
こうした企業(Amazonはその典型といえる)はテクノロジープラットフォームを運営し、そのプラットフォーム上でビジネスパートナーや顧客が参加する。エコシステムドライバーは顧客のデータを保有し、プラットフォームパートナーと顧客の間の全取引からデータを抽出する。
以上4つのデジタルビジネスモデルに関する詳細と、企業がデジタルプレイヤーとして成功を収めるために確立しなければならない資質について、ウェルナー氏に話を聞いた。
質問 うまくやることが特に難しいデジタルビジネスモデルとして、あなたは「エコシステムドライバー」を挙げています。Amazonはこれを極めていますが、この分野の他の企業はどうでしょうか。
ウェルナー氏 この分野には金融サービス企業が数多く進出している。そうした企業がやっているのは目標を定めることだ。彼らは自分たちのことを金融サービス企業だとは思っていない。「われわれは巨大企業にはなれないかもしれないが、それも結構。多分、われわれがやるのは目標を定めることであり、そこで最高でいることが目標だ」と彼らは考えている。
不動産会社や一部の保険会社も、このデジタルモデルを採用し始めている。「解決しなければならない問題があることは分かっている。われわれは多数の業者を集めて、その問題を解決するためのプラットフォームを提供できる」と彼らは説明する。Fidelityは多数の年金生活者にとってのエコシステムドライバーだ。ちなみにFidelityは、多くの超大手企業と同様に、デジタルビジネスモデルの全4分野に進出している。住宅購入の分野は、まだ大部分が定まらない状況にある。
質問 ZillowやRocket Mortgageといった企業は?
ウェルナー氏 Zillowはデジタルであり、あらゆる物件を見つけることができるが、あらゆるローンが集められているだろうか。権原保険や不動産査定はどうか。この分野はまだ、一種の激戦地だと思う。
小売りでは現在、Amazonの勝利と言わざるを得ない。だが、より専門性の高いエコシステムが登場するだろう。高級小売店の1つが規模の小さいエコシステムをとりまとめ、集約性を高めて最高の商品を求める顧客層を追求し、そうした顧客が求めるものを提供するかもしれない。
企業は自分たちがどこでエコシステムドライバーになれるかを見定めようと努めており、ごく少数の顧客にとってのドライバーにしかなれないことに気付くかもしれない。
質問 エコシステムドライバーとなる基盤はテクノロジーです。テクノロジーが大企業にブレーキをかけたり、取引を決裂させたりすることはあると思いますか?
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