企業が膨大なデータや先進技術を活用するには、予測がつかない将来に対応するという難題が立ちはだかる。MITメディアラボ准教授のイヤッド・ラーワン氏はそう指摘する。
人工知能(AI)と機械学習は、膨大なデータの活用により、医療や省エネルギーなどさまざまな分野を進歩させる大きな可能性が期待できる。2018年5月、米マサチューセッツ州ケンブリッジで開催された「MIT Sloan CIO Symposium」で、研究者たちはそう語った。しかし、Googleなど潤沢な研究開発費のあるIT大手がこうした分野を推進する一方、多くの企業では最高情報責任者(CIO)がAIや機械学習のためのデータ管理に苦労している。企業はどのような課題に立ち向かわなければならないのか。シンポジウムに参加した企業IT幹部はそう問いかけた。
未来の仕事に関するパネルディスカッションで司会を務めたエリック・ブリニョルフソン氏(MITデジタルエコノミーイニシアチブ ディレクター)は、パネリストに意見を聞いた。
パネリストの1人でMITメディアラボ准教授のイヤッド・ラーワン氏は、AIや機械学習のデータを最新の状態に維持することと、商品需要予測など特定の目的に特化することが大きな課題だと述べた。企業はともすると、データを広範な用途に使いたがるのだという。
「世の中は変化する。規制などの変更によって、物事の起こる配分にも変化が生じる」とラーワン氏は指摘し、初めは間接的な影響しかなくても、やがて「ビジネス最適化の機会を見逃しかねない」と語った。
ブリニョルフソン氏はラーワン氏に、AIと機械学習のデータに関する課題とその具体例、また、重大な決定を左右するアルゴリズムやテクノロジーに人のバイアスが及ぼす影響について質問した。その内容を以下に紹介する。発言には読みやすいよう編集を加えた。
エリック・ブリニョルフソン氏 企業が保持する膨大なデータをAIと機械学習に活用するには、どのような課題があるか?
イヤッド・ラーワン氏 データを最新の状態に維持することと、関連するプロセスをデータに反映させることだ。例えば、株価の動きや、各地の「Uber」の需要などの予測は、比較的体系化したものになる。ところが、データから構築した予測モデルを別のさまざまなビジネスプロセスにも活用しようとしがちだ。しかし、世の中は変化する。規制などの変更によって、物事の起こる配分にも変化が生じる。
ブリニョルフソン氏 具体的な例でいうと?
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